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今回は、採用についてどのような対応を考える必要があるのかについて書いてみたいと思います。「人が集まらない」、「予定した採用数を満たすことができない」、「入社後にミスマッチがわかる」、「入社後短期間での退職に悩まされている」など、採用に関する問題について耳にすることがあります。このような問題にどのように対応すればよいのかについて考えるヒントになれば幸いです。
詳細は、この後議論していきますが、大きく二つの観点で整理していきます。一つは採用数で、もう一つは応募数になります。採用数が十分か十分でないか、応募数が十分か十分でないかという二つの軸で考えることで、4つの観点で整理することが可能になります。
以前から採用を行っている組織であれば、過去のデータに基づいて、予定している採用数を満たすためには、どのくらいのオファーを出す必要があり、そのためにはどのくらいの人数を面接する必要があり、どのくらいの応募数が必要かを計算することができるでしょう。その予定した採用数や応募数と実際の数字とを比較して、どのようなアクションをとればいいかを明確にしていきます。
採用数も十分で、応募数も十分である
一つ目の観点は、「採用数・応募数ともに十分である」という象限です。この象限では、採用数と応募数が両方とも予定した数字を満たせている状態です。この状態では、予定通りの採用数が実現できているので一見非常に良い状態だと考えられます。
ここでは、更により良い状態になることを目指していきます。例えば、同じ採用数をより少ない応募数で実現するにはどうすればよいかを考えます。多くの場合、採用活動には、母集団形成のための活動やレジュメスクリーニング、面接、オファー出しなどが考えられます。つまり、一人を採用するために、多くの労力が必要になります。また、一人を採用するためには、最低でも数名以上の母集団が形成されていることでしょう。観点をかえると、選考の結果、他の方を選ばせていただいた、という判断がなされます。このことは、採用をする組織の観点でも、採用活動に参加した応募者の観点でも無駄がないと言い切れる状態ではないと言わざるを得ません。
そこで、より少ない労力でその組織にふさわしい人材を採用する方法を模索していきます。例えば、母集団形成から応募、応募から面接、面接からオファー、オファーから入社といったそれぞれのコンバージョン率をいかに高めていくかを考えます。また、母集団形成からオファー受諾までの期間をいかに短くするかを考えていきます。
採用数は十分だが、応募数は十分でない
二つ目の観点は、「採用数は十分だが、応募数が十分でない」という象限です。過去のデータややり方に基づいて考えると、この象限は現実的に起こりにくいかと思います。しかし、環境の変化が起きたりすることも考えられるので、まったく起こらないとも言いきれいでしょう。この象限は、より少ない応募者数で予定通りの採用数を実現できるようになったと考えることもできます。一方で、後日問題になりえることも想定できるので、実態を把握することが必要です。
例えば、面接の合格率が極端に上がっていないかを確認します。組織として採用活動をしているということは、少なくとも人材に対するニーズがあることを意味します。仮に、応募数が少なくてもある程度の人員を採用し確保する必要がある状態です。この場合、採用ニーズに直面している組織にとっては、人を確保すること自体のほうが優先される可能性があります。また、一般論として、採用部門も採用数の必達等のプレッシャーが大きくなりすぎると、数を確保すること自体の優先順位が高まる可能性も考えられます。つまり、その組織が重視している基準を満たす人材を見極めるということの優先順位が下がりかねません。このことが起きてしまうと、後々その組織にとっても採用された人にとっても良くないことが起こりかねません。そのため、データや実際の状態を確認して、そのようなことが起きていないかを確認します。
一方で、そのようなことが起きておらず、それまでの採用活動によってより少ない応募数で必要な採用数を実現できるようになったのであれば、それは、その組織の採用ケイパビリティが向上したということを意味するので、評価に値する変化と言えるでしょう。
更に、その母集団の状況でより応募数を増やすにはどうすればよいのかを考えて実行することで、よりその組織に適した人材を採用できるようになっていきます。
採用数は十分でないが、応募数は十分である
三つ目の観点は、「採用数は十分でないが、応募数は十分である」という象限です。この象限では、応募数は予定通り集まっている一方で、それが採用数につながっていない状況です。
ここでは、母集団形成のやり方を見直します。具体的には、実際に行っている母集団形成の活動が、その組織の求める人材像を満たす人たちに届いているかどうかを確認します。確認すべきポイントは、「その組織の求める人材像を満たす人たちが、採用プロセスに参加しようと思える活動になっているかどうかです。ここでの目的が、「応募数を確保する」ことに集中してしまい、「組織が求める人材像を満たす人たちの応募数」という観点が弱くなっていないかを確認する必要があります。
もし「応募数を確保する」ことのほうが優先されてしまうと、そのための活動が優先されてしまいます。更に、応募数自体は非常にわかりやすいものでもなるので、実際に応募数が多くなっていくと、数が増えているということ自体が達成感につながってしまいかねません。そうすると、この行動自体が促進されるようになっていってしまいます。
母集団形成の活動が、組織が求める人材像を満たす人たちが、採用プロセスに参加しようと思える活動になっている場合には、組織が求める人材像が正しいのかを確認したり、面接が組織の求める人材像を満たす人を見極める内容になっていたりするのかを確認していきます。
採用数も十分でなく、応募数も十分でない
最後の象限は、「採用数も十分でなく、応募数も十分でない」です。この象限では、組織が求める採用数を満たせておらず、予定した応募数も満たせていないという状況になります。そのため、この象限では、抜本的に見直す必要があります。
一つの観点は、外部環境の変化です。例えば、競合が以前と比べて極端に採用数を増やすようになったことが考えられます。一方で、競合の採用数が変わっていなかったり、競合も応募数の減少に直面していたりするのであれば、業界に対する認知に変化が起きていることも考えられます。その認知の変化をもたらした要因も探っていきます。
もう一つの観点は、内部環境です。例えば、組織が求める人材像が適切か、その人材像を満たす人々にしっかりメッセージが届いているか、そのメッセージはその人々が求めることを満たしている魅力的なものか、面接が適切に行われているか、相互理解がより確実に行われているかなどについて包括的に確認をする必要があります。
まとめ
今回は、採用活動を改善するためのポイントについて書いてみました。具体的には、採用数が十分であるかどうかという軸と、応募数が十分であるかどうかという軸の二軸で整理して、それぞれの象限でのポイントについて書きました。もちろんこれ以外のポイントもあると思います。
ご覧いただきありがとうございます。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、採用活動を改善するためにどのような観点で考えていますか?
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