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今回は、ビジネスリーダーが社員の離職を防ぐにはどのようにすればいいかについて書いてみたいと思います。昨今のビジネス環境では、社員の離職によって様々なリスクが考えられるようになりました。以下では、社員の離職によってビジネスリーダーが直面する問題について述べた後に、ビジネスリーダーが社員の退職を防ぐためにできることについて私の考えか書いていきたいと思います。
ビジネスリーダーが社員の離職によって受ける問題
社員の離職は、企業にとってさまざまな問題を引き起こします。一般的に以下のようなことがあげられます。第一に、優秀な人材の流出は、業務の生産性低下を招きます。特に専門的なスキルや知識を持つ社員が退職すると、その穴を埋めるために時間と労力がかかります。第二に、採用や研修のコストが増大する点も無視できません。新たな人材を採用し、育成するには時間と資金が必要であり、短期間で成果を出せるとは限りません。その間は他の社員が対応せざるを得ないため、増えた業務に苦しむ他の社員の更なる離職につながる可能性もあります。第三に、組織の士気やモチベーションが低下する可能性があります。特に、信頼関係を築いていた同僚が離職すると、残ったメンバーの意欲が削がれることもあります。第四に、顧客や取引先との関係が悪化するリスクもあります。担当者が頻繁に入れ替わると、顧客に対する対応の質が低下し、信頼を失うことになりかねません。最後に、企業のブランドや評判にも影響を与えます。高い離職率の企業は、求職者や投資家からの評価が下がる可能性があり、長期的な成長に悪影響を及ぼします。
もちろん組織には個別性があるため、問題も様々なものがあり、その組織固有のものあるでしょう。そのため、具体的な対策は各企業の状況に応じて異なると思いますが、以下では、私の経験に基づいて、ビジネスリーダーが社員の離職を防ぐ取り組みについて書いてみたいと思います。
社員がその実現に是非関わりたいと思えるパーパスやミッションなどの存在意義や、ビジョンなどの長期目標を設定する
社員が長く働き続けたいと思える組織には、共感できる存在意義やビジョンが必要です。ビジネスリーダーが明確なパーパスやミッションを掲げることで、社員は自身の仕事がより大きな目標と結びついていると感じることができます。そのためには、リーダー自身が心から信じる存在意義や長期目標を設定し、それを社内に浸透させることが重要です。
パーパスやビジョンの設定には、大きく分けて二つの方法があります。一つ目は、ビジネスリーダーが自身の想いを込めた存在意義や目標を作り上げ、それを組織全体に伝えていく方法です。この場合、リーダーの情熱や信念が明確に伝わるため、強い一体感を生み出すことができます。二つ目は、社員を巻き込みながら、彼らの想いも反映させた存在意義や長期目標を共に作る方法です。このアプローチでは、社員の意見が尊重されることで、より強い納得感と当事者意識が生まれます。
また、これらのパーパスやビジョンは、一度作って終わりではなく、継続的に社内で共有し続けることが重要です。日々の業務の中で、パーパスに基づいた意思決定を行い、社員と対話を重ねることで、組織としての一体感を高めることができます。
メンバーが是非達成したいと思える目標を設定する
社員がモチベーション高く働き続けるためには、業務上の目標が明確であり、それが個々のパーソナルバリューやキャリアビジョンと結びついていることが重要です。単なる業績目標だけではなく、その社員が成長を実感できる目標を設定することで、仕事に対する意義を見出しやすくなります。
目標を設定する際には、まずそのメンバーが担っている役割に求められる成果を明確にすることが必要です。そのうえで、その成果を出すことで社員自身のパーソナルバリューが満たされるように設計することが望ましいでしょう。また、その目標が達成されることで、そのメンバー自身のキャリアビジョンの実現に近づくと実感できるようにすることも大切です。
目標設定は、上長から一方的に押し付けるものではなく、本人が会社から期待される目標と自分が求めていることとのつながりが明確になるようにしていくことが重要です。本人が納得し、自分ごととして捉えられる目標を設定することで、日々の業務に対する意欲も高まります。
日々の活動でパーソナルバリューを実感できる定期的な会話を行う
目標を設定するだけでなく、その目標に向かうプロセスにおいて、社員が成長を実感できる環境を整えることも重要です。そのために、ビジネスリーダーは、定期的にメンバーと対話を行い、彼らのパーソナルバリューが実践されていることを確認し、成長を実感できるようにサポートします。
この会話の中では、まずメンバーが自身のパーソナルバリューが発揮された瞬間を思い出せるような質問を投げかけると効果的です。また、ビジネスリーダー自身が、そのメンバーの行動や成果に関する具体的なエピソードを共有し、フィードバックを行うことで、本人の自信につながります。さらに、目標の達成に向けて取り組む中で成長した点を具体的に指摘し、称賛することで、本人のモチベーションを高めることができます。
また、より良い成果を生み出すために、どのような工夫ができるかを一緒に考える時間も大切です。メンバーが自身の目標達成を確実にするためのサポートをしながら、さらに高いレベルに挑戦できる環境を提供することで、成長の機会を最大化することが可能になります。
納得感のある評価や報酬を提供する
社員が離職を考える大きな要因の一つに、その社員が自身の評価や報酬を不公平だと感じることが挙げられます。どれだけ組織のパーパスや目標に共感していても、自分の成果が正当に評価されていないと感じると、働き続けるモチベーションは低下します。そのため、ビジネスリーダーは、社員が納得できる評価と報酬の仕組みを整えることが重要です。
評価結果は期末のサプライズにならないようにする必要があります。定期的な1on1やフィードバックの場で、メンバーが現在どのような評価を受けているのか、どこを改善すればより高く評価されるのかを明確に伝えることで、不安や不満を防ぐことができます。
また、仮に評価が芳しくない場合でも、悪い評価結果になる前に適切なサポートを行い、目標達成に向けた具体的な支援をすることで、社員が成長できる機会を提供できます。
報酬についても、その考え方を明確にし、一貫したルールに基づいて運用することが重要です。メンバーが理解できるように説明することも求められます。ビジネスリーダーは、報酬制度は人事部門の話と丸投げするのではなく、ビジネスリーダー自身が主体的に関与して自らの言葉で話すことで、メンバーの納得感を高めることができます。
メンバーが言いたいことや聞きたいことをオープンに話せる環境を整える
社員が安心して働き続けるためには、心理的安全性の高い環境が不可欠です。自分の考えや不安を率直に話せない環境では、ストレスが蓄積し、最終的には離職につながることもあります。そのため、ビジネスリーダーは、メンバーが自由に意見を言える場を整え、積極的に対話を行うことが大切です。
オープンな環境を作るためには、単に「何でも話していい」と伝えるだけでは不十分です。メンバーが安心して話せるように、リーダー自身が率先して自己開示を行い、双方向のコミュニケーションを促す必要があります。また、メンバーが発言した内容に対して、その言葉の背景にある意図を正しく理解しようと努めることが重要です。「その意見を言った意図はどのようなことか?」「本当に解決したい課題は何か?」といった視点で対話を深めることで、メンバーが「自分の意見は尊重されている」と感じることができます。また、日常の1:1では、業務の進捗確認だけではなく、そのメンバーの表情や声のトーンなどからどのようなモチベーション状況なのかを把握するようにして、必要に応じてその感情に向き合い適切に対応することも重要です。
メンバーから言われたことについては、仮にそれがネガティブなことだったとしてもその場で即座に否定をすることはしないで、一度受け止め、率直に話してくれたことに感謝の姿勢を示すことも重要です。批判的な意見であっても、真正面から向き合い、建設的な解決策を模索することで、メンバーとの信頼関係を強化できます。
組織に適した人を採用する
離職を防ぐためには、そもそも組織に合った人材を採用することが重要です。そのため、採用の段階で、組織のパーパスやビジョン、価値観、カルチャーに共感できる人材を見極めることが求められます。
まず、候補者が組織の存在意義や長期目標に共感しているかを確認することが重要です。企業のミッションや価値観に合わない人材は、入社後に組織の方向性とズレが生じやすくなってしまいます。また、その役割において求められる成果を出せる経験やスキルを持っているかどうかも重要なポイントです。
さらに、入社後の認識のギャップを防ぐために、候補者が実際の職務内容や期待される役割を十分に理解しているかを確認する必要があります。特に、どの程度の権限が与えられるのか、どのようなリソースが利用できるのかなど入社後の環境に関する情報を正しく伝え、候補者自身が納得したうえで入社を決められるようにすることが大切です。
適切な管理職を任命しフォローアップする
組織の規模が大きくなると、ビジネスリーダーがすべてのメンバーを直接マネジメントすることは難しくなります。そのため、適切な管理職を任命し、彼らがメンバーのマネジメントを適切に行えるようにサポートすることが重要です。
管理職の選定においては、これまで述べたことを実践できる人物を任命することが求められます。また、ビジネスリーダーは、自身が任命した管理職に対しても、定期的にフォローを行い、適切なマネジメントができるように支援をすることが重要です。
それでも離職は起こり得る
どれだけ対策を講じても、社員の離職を完全に防ぐことはできません。市場にはさまざまな機会があり、自社では提供できないキャリアの選択肢やより高い報酬を提示する企業が存在する以上、一定の離職は避けられないものです。
しかし、ビジネスリーダーとして大切なのは、単に離職を防ぐことではなく、社員のキャリアの成長を支援し、最適な選択ができるようにすることです。仮に社員が他社でより良い機会を得られるのであれば、それを前向きに受け入れることも必要です。そのためにも、組織の運営を「誰かが離職しても回る仕組み」にしておくことが重要になります。
まとめ
今回は、ビジネスリーダーが社員の離職を防ぐためにどのようなことをすべきかについて書いてみました。具体的には、以下になります。
- 社員が共感し、関わりたいと思えるパーパスやビジョンを設定する
- メンバーが是非達成したいと思える目標を設定する
- メンバーが成長を実感できる定期的な会話を行う
- 納得感のある評価や報酬を提供する
- メンバーが言いたいことや聞きたいことをオープンに話せる環境を整える
- 組織に適した人を採用する
- 適切な管理職を任命し、フォローアップする
- それでも離職は起こり得ることを理解する
最後までお読みいただきありがとうございます。今回の記事が、少しでも多くの人々の参考になれば幸いです。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、社員の離職を防ぐために、どのようなことを行っていますか?
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