このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。
組織の理解を深めるために、私は、以下の図を使用しています。今回は、パフォーマンスマネジメントの継続的なフォローの称賛と提案に焦点を当てたいと思います。

パフォーマンスマネジメントを「その年の目標を達成しやすくする仕組み」と定義しました。以前の記事で目標設定や継続的なフォローについて書きました。継続的なフォローについては、フォローの内容にはいろいろあるが、究極的には称賛と提案の観点で考えられることを述べました。
今回は、称賛と提案をする際は、どのようなことを留意したらいいのかについて書いていきます。
As-isとTo-be
その年の目標を達成した状態をTo-be、今の状況をAs-isとします。一つのポイントは、To-beの観点からAs-isを見て話をしないということです。To-beの観点から話をすると、足りていないことに意識が行きがちで、できていないことを指摘しやすくなってしまいます。多くの場合、メンバーは自分の課題を認識しているので、更に上長から指摘をされると、モチベーションが下がることにつながってしまいます。認識していない場合でも、できていないことを指摘されるだけでは目標を達成しやすくすることにはつながりにくいでしょう。
この場合は、As-isからTo-beに少しでも近づくためには、どのようなことをすればよいのかについて話し合い、提案することが有効です。更に、その目標達成に取り組み始めたスタート時からAs-isの状態になるのに役立った言動を上長が具体的に称賛したり、メンバーに質問して考えてもらったりすることもできます。どのように行うかは、そのメンバーの個性や状況によります。そして、スタート時からAs-isの状態にまでなれた良い言動を、To-beに近づくためにどのように活用できるかについて話し合うのも役に立ちます。また、As-isからTo-beに近づくために、習得したほうが良いスキルを特定し、必要なトレーニングについて提案することもできるでしょう。これも個性や状況によりますが、上長から具体的に提案したほうが良いこともあるでしょうし、問いかけたほうが良いこともあるでしょう。
そして次の1:1の際に、実際に行った行動で、続けた方が良いことについて称賛し、改善の余地がある部分については建設的な提案を行い、ポジティブな変化を促します。
As-is、To-beが出てくると、「As-isとTo-beのギャップに対してWhyを繰り返すことで本当の原因を特定できる」というアプローチが頭に浮かんだ方もいらっしゃるかもしれません。このアプローチは、物事に対してや自分に問いかけるためには有効な手段であると思います。一方で、メンバーに対して使用する際にはメンバーの気持ちに配慮することが重要です。自分が上長から「Why」と質問されて答えても連続して「Why」と問われ続けたら、どのような感情になるのかを想像いただければご理解いただけると思います。
提案する?
上長が「提案する」ことに対して、違和感をもたれる方もいらっしゃるかもしれません。
組織の状況やカルチャーにおいては、上司の権限として命令型のアプローチをとることも有効です。ただ、私が考えるビジネスの成功には、社員が働きがいを感じて業務に取り組んでいることも含みます(Employee success)。その年の目標を達成することは、最終的にはビジネスの成功につながることですので、パフォーマンスマネジメントにも社員が生き生きと業務を行うという観点を含めることが大切です。状況によっては命令をするアプローチが有効な場合もありますが、私の経験では、社員の自主性を尊重するアプローチの方が、目標達成に繋がりやすいことが多かったです。
「やらせる」ということは、メンバーにとっては「やらされる」ということを意味します。「やらされる」場合と、「自分が意義を感じたことを自分で決めた言動で取り組む」場合とでは、どちらのほうがより個人の目標を達成しやすくし、ひいては組織の目標を達成しやすくなるでしょうか。更にその次の年、またその次の年に設定された目標を継続的に達成しやすくするという観点でかがえるとどうでしょうか。このような観点で考えてみると、上長としてどのような行動をとったほうがいいのかご自身なりの回答が得られるかと思います。
想定をこえるプラン
その人に任された目標を達成する責任はその人にありますが、上司はその目標が達成されるようにサポートをする役割があります。この役割分担は明確にする必要があります。「自分が意義を感じたことを自分で決めた行動で取り組む」という観点で私がメンバーに話すことを最後に紹介したいと思います。それは、「私からの提案はあくまでも一つの参考にしていただき、それを踏まえて自分で考えた解決策を提案してみてください。」ということです。
これによって、メンバーが自分の考えを自由に表現し、新しいアイディアや解決策を提案することで、より良い結果が得られることを期待しています。私が言ったことを行うだけでは、アウトプットが想定内のものになります。なので、アウトプットの質を担保することはできますが、私が自分で行うことを他の人に代わりに行ってもらったにすぎません。しかし、自分で意義を感じたことを自分で考えて提案することで、私の想定をはるかに超えた素晴らしいプランを期待できるようになります。実際にそういうこともありました。そのような時はとても嬉しいですし、そのプランを立てたメンバーを誇りに思います。私自身の学びにもなります。もちろんより良い成果につながります。
自分で考え、提案する機会を持つことが、成長の一助となります。上司の指示を参考にしつつ、自分の意見を取り入れることで、より成長が促されるでしょう。指示に従うことも重要ですが、自分自身で意義を感じたことに取り組むことで、さらに高いモチベーションを維持することもできます。
上長の役割として、メンバーの自主性を尊重しつつ、メンバーが目標を達成するためのフォローを行うことはとても重要です。本人が当事者意識をもって目標の達成に取り組み、上長が目標達成のために必要なサポートを必要なタイミングで行うことで、目標を達成しやすくできると思っています。
まとめ
今回の記事では、パフォーマンスマネジメントにおいて、称賛と提案を行う際の留意点について述べました。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織との関連はございません。
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