AIで暗黙知を形式知化し組織能力を向上

M.AI

このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。

今回は、毛色を変えて、私の考えていることを書きたいと思います。「AIを活用して、こういうことができれば、組織の能力が更に高まり、ビジネスの成功により貢献することができるだろう」と私が考えていることを書きますので、現段階では私の仮説であり、今までの記事で書いてきているような私が実践して結果を出してきているものではないことはご了承ください。

「暗黙知の形式知化」「形式知の個別化」「個別化の最適タイミング化」という観点で以降のパートで議論していきたいと思います。

 

暗黙知の形式知化

まず行うことは、「暗黙知の形式知化」です。組織の中には、ハイパフォーマーが実践している言動があるかと思います。同じ業務を行っていても、パフォーマンスの高い・低いが出てきてしまっていることでしょう。最初に行うことは、ハイパフォーマーの中にある暗黙知を形式知化して、他の人も理解ができるようにしていくということです。

これについては、私は今までの経験の中で実践したことがあります。例えば、営業職のハイパフォーマーについて複数の企業で取り組みました。まずは、ハイパフォーマンスの定義を行います。この定義は、組織によって異なると思いますので、ここでは仮に、ビジネスの成功の観点から、「顧客満足が高く、財務的な成果も高く、顧客や社内関係者からの評判も高い」と定義してみます。

次に、この定義に該当する人をリストアップします。そして、リストアップした人にインテビューを行ったり、営業同行を行って実際に顧客とどのように対峙しているのかを観察したりします。一方で、他のメンバーにも同様の調査を行い、特定の状況で成果を上げやすい特徴的な行動や、すべてのメンバーに共通する行動パターンを明らかにします。このプロセスでは、各メンバーの成長機会に着目し、潜在的な強みを見出すことを意識します。

私が行っていた時は、物理的な制約があり、時間がかからざるを得なかったり、数が限られたり、リソースの制限があったりといったことがありました。このようなことをAIで行えると、圧倒的な数をより短時間でより少ないリソースで、より質の高いアウトプットができるのではないかと考えています。例えば、AIを活用することで、ハイパフォーマーの言動をより精緻に分析し、大規模にパターン化することが可能です。AIは、膨大なデータを瞬時に処理し、パフォーマンスの高い行動パターンや成功事例を特定できます。さらに、AIが自動的に最適なナレッジマネジメントシステムを提供し、個々の社員がアクセスしやすい形式で共有できるため、形式知化のプロセスが一層効率化されます。実際にデータを収集する際には、対象者のプライバシーを保護し、データは匿名化するなどの対応を徹底し、本人の同意を得た上で行うことが重要です。こうすることで、安心して取り組める環境を整えることができます。

 

形式知の個別化

次に行うことは、「形式知の個別化」です。ハイパフォーマーの言動が形式知化されたものを、組織のメンバーの個々の状況に応じてカスタマイズするということです。私が今まで行ってきたことでは、これはとても難しかったところです。

私が今まで行ってきたことでは、暗黙知を形式知化したものを、研修プログラム化やツール化しました。そして、その研修プログラムを実施して、形式知を学び、ロールプレイングで実践し、フィードバックや振り返りを行ってまた行ってみるということ実施しました。また、ツールとして、その形式知化した言動を、営業プロセスにそって再構成して表にまとめたものをラミネート加工して営業の皆さんに配布しました。営業の方は、自分が顧客と対峙する前にその表を見て確認し、事前に一人ロープレを行って成功したイメージをつくった上で、実際に顧客に対応しました。そして、顧客対応が終わったら、またその表を見て振り返り、次はどうするかを考えたうえで、次の顧客に対応するということを行いました。これによって、売上や生産性は飛躍的に高まりました。

一方で、私が今まで行ってきたときでは、ここまでが限界と感じていました。もちろん、直属のラインマネージャーが、そのメンバー個々の状況に応じて育成の仕方を変えていくことで、個別化はできると思いますが、ここについてのアウトプットの標準化はまた別の課題になるでしょう。

そこで、その組織のメンバーの習熟度合いに応じて、どの形式知にどのように取り組んでいくことで、その個人のパフォーマンスが最適になるのかをAIによって実践することができれば、アウトプットの標準化や最適化につながるだろうと考えています。例えば、AIが各メンバーの過去のパフォーマンスデータや行動特性を分析し、個別にカスタマイズされた研修プランや実践ツールを提案する仕組みを構築できれば、より効果的に形式知を活用できるようになるでしょう。このようなアプローチにより、従来の一律的な研修プログラムでは対応しきれなかった個別の課題にも応えられる可能性があります。

 

個別化の最適タイミング化

最後は、「個別化の最適タイミング化」です。個別化によって、その個人の習熟状況に合わせて、どの形式知を習得することで、その個人のパフォーマンスが更に高まるのかが明確になります。「個別化の最適タイミング化」では、その個人がその形式知を発揮したり習得したりするタイミングを最適化するということです。

例えば、オンラインで商談することを想定します。オンラインで顧客と商談している時に、その商談で話している内容や相手の様子等をAIが分析して、どのようなことを話せばその顧客の満足度が高まり、商談が成功する確率が高まるのか、タイムリーにAIが提案してくれるということです。これによって、私が今まで行ってきたときでは、顧客と商談する前に形式知化されたツールを見直し、一人ロープレを行って、その上で商談に望むというところから、タイムラグなしに、その瞬間でどの形式知をどのように活用するのかということができるようになります。もちろん、AIが提案する内容が公平で適切であることを保証するため、アルゴリズムのバイアスを排除し、透明性を確保することが重要です。これにより、利用者が安心してAIの提案を受け入れられる環境を構築することができます。

また、部下の育成の場合にも活用できます。例えば、オンラインで部下と1 on 1を行っているときに、話している内容や部下の様子から、AIがそのラインマネージャーに対して、どのようなことをどのように伝えるのか、または質問をするのかについて提案します。ラインマネージャーは、その提案に基づいて実行することで、最適な育成につながっていきます。これによって、状況に応じて、コーチング的になったり、ティーチング的になったり、カウンセリング的になったりするでしょう。育成がより短い時間でより高い質で行われるようになっていくでしょう。また、その結果、コミュニケーションの質も向上すると思われるので、上長と部下の関係悪化による離職も防げるようになるかもしれません。一方で、こうしたAIの活用には、データ利用に関する透明性や、プライバシーの保護が重要です。個人のデータが適切に管理される仕組みを確立し、従業員が安心してAIを活用できる環境を整えることが不可欠です。これらの倫理的配慮が担保された上で、信頼性の高いAI活用が可能になると考えます。

更に、最適なタイミングで振り返りを実施することができるようになります。AIの分析によって、振り返りや内省を促すタイミングや内容が最適化されることで、より短時間でのその形式知の習得につながっていきます。

以上のことが可能になれば、より短い時間でより高い質のアウトプットがより多くの人からなされるようになるでしょう。それによって、組織の能力が今まで以上に高まり、ビジネスの成功の実現に貢献していくことと考えられます。

一方で、今回書いたことは、デジタル情報になっていることが前提であると思います。その前提を考えると、今後はよりオフラインでの言動が個人のハイパフォーマンスの差別化になっていくのかもしれません。

以上、今回書いた内容は、現時点での私の仮説になります。すでに実証された方がいらっしゃれば、是非その効果についてデータを共有いただけると嬉しいです。また、これらの3点を包括的にカバーするものがまだ世の中に存在しないのなら、ご興味のある方がいらっしゃれば私と一緒に取り組んでみませんか?

 

まとめ

今回は、AIを活用した「暗黙知の形式知化」「形式知の個別化」「個別化の最適タイミング化」という3つの観点から、組織の能力向上の可能性について考えを述べました。ご覧いただきありがとうございます。あくまでも今の段階では、仮説であって、私が実践して結果を出したものではないことはご了承ください。また、こういった活用については、倫理上の問題など、考慮する必要のあることが他にもたくさんあるでしょう。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。

皆さんは、AIをどのように活用すると組織の能力を更に高められると思いますか?また、これらのアイデアを実際に実践する際に、どのような課題や制約が考えられるでしょうか?

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