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今回は、組織構造について書いてみたいと思います。現在組織構造にはいくつかの種類がありますが、主に、機能別組織と事業部制組織を中心に議論したいと思います。私は、組織構造は、その組織の目標や戦略を実現するために必要なものと考えています。そのため、組織構造が単独で存在するのではなく、その組織の目標や戦略実現の観点から選択したり調整したりするものと認識しています。基本となる構造が、機能別組織と事業部制組織になることが多いので、今回はこの2つについて書いてみたいと思います。
機能別組織
機能別組織は、「営業部」や「研究開発部」、「マーケティング部」、「ファイナンス部」、「人事部」などのそれぞれの機能でまとまっている組織構造です。
機能別組織のメリットやデメリットについてAIで調べたところ、以下のような返答がありました。メリットは、専門性の向上、明確な責任範囲、経営資源の最適化、キャリアパスの明確化が挙げられました。デメリットは、部門間のサイロ化、全体最適の欠如、柔軟性の低下、意思決定の遅れが挙げられました。ご興味があれば、ご自身でも調査いただけるとさらに理解が深まると思います。
これらの観点はそれぞれ重要であると思いますが、私が実務家として、目標や戦略実現のための組織構造を構築するという観点では、以下の点を重要視しています。メリットとしては、その機能の能力を高めることと、効率を高めることです。デメリットは、サイロ化による部分最適化によって、結果的に組織の目標や戦略実現にマイナスの影響を与えてしまうことだと考えています。更に言うと、これらのメリットやデメリットは、絶対的にという観点ではなく、他の組織構造と比べた場合の相対的にという観点での話になります。
機能別組織は、それぞれの機能でまとまっている組織です。例えば、人事部は、人事に関する機能がまとまっている組織です。人事の機能がそれぞれの組織に分散している組織と比較すると、人事の知見は、人事部に貯まりやすくなります。その結果、機能別組織のほうが、その機能の能力を高めやすくなります。
もう一つのメリットは、効率が高まりやすいということです。例えば、人事の機能がそれぞれの組織に分散している場合、仮にある組織で最適な人事のFTEが1.5だとすると、実際の運用では最適なFTEの1.5にはならず、1か2になります。そのため、最適よりも少ないか多いということになり、いずれにしても効率は下がります。一方で、人事の機能が一つの部署にまとまっていると、1に満たないところは、お互いにサポートし合うことでカバーできるので、より効率的な運用ができることになります。FTE管理を厳格に運用している組織にとっては、大事なポイントになるでしょう。
デメリットとして挙げた、サイロ化による部分最適化によって、結果的に全社の目標や戦略実現にマイナスの影響を与えてしまうことについては、多くの方に実感いただけるのではないでしょうか。それぞれの機能で組織化をすることで、全社の目標や戦略実現よりも、その部門の目標や部門戦略の実現のほうが優先されるようになりがちです。営業部門が売上を上げること、製造部門が不良率を下げること、マーケティング部門が消費者の認知を高めること、サプライチェーン部門が在庫をなるべく抱えないこと、人事部門が人事制度を厳格に運用することなどを主な部門目標としている場合には、他の部門を自部門の目標達成の阻害要因と考えてしまうこともあり得ます。
事業部制組織
事業部制組織は、その組織の中でビジネスが完結し、あたかも一つの会社のように運営できる組織構造です。AIでそのメリットとデメリットを調べると、メリットは、事業ごとの柔軟な対応、責任の明確化、意思決定の迅速化、経営者の育成、成果の把握が容易と出てきました。一方、デメリットは、経営資源の重複、全体的な統一感の欠如、トップマネジメントの負担増、事業部間の競争・協力不足、コスト増加の可能性と出てきました。
これらも踏まえて、私が事業部制組織を考える際には、以下の点を考慮します。メリットとしては、柔軟性や機動力が高まること、デメリットとしては、効率が下がりやすいということです。その組織の中でビジネスが完結するので、組織のメンバーは、他の組織構造と比べると、そのビジネスのことをより身近に感じていることが多いです。その組織の状況もより理解しているので、状況に応じて、より柔軟に行動をとりやすくなります。そして、機動力も向上します。デメリットとして、効率が下がりやすいことについては、先ほどFTEの例で説明しました。加えて、事業部制組織では、他の事業部との協働が自然発生的に起こることは難しい場合があります。その結果、各事業部が同じような業務を重複して行い、非効率が生じる可能性があります。
良い組織構造とは?
以上、機能別組織にも事業部制組織にもそれぞれメリットとデメリットがあることが分かりました。では、どの組織構造が良い組織構造なのでしょうか?結論から言うと、メリットがその企業の目標や戦略の実現により貢献する組織構造が良い組織構造になります。それぞれメリットとデメリットがあるので、絶対的に正しい組織構造は存在しないと考えています。メリットとデメリットを考慮して、その企業の目標や戦略の実現に貢献しやすい組織構造を選ぶ、ないしは調整する必要があります。
例えば、戦略として、より一段それぞれの機能の能力レベルを高める必要があれば、機能別組織のほうがふさわしくなります。私も、自分が新たに担当した人事部門の能力水準を高める必要性から、それぞれのビジネスごとの担当になっていたところを、敢えて、採用チームやトレーニングチーム、C&Bチームのように人事の機能で再構築したこともあります。その結果、それぞれのチームで知見が貯まり、より一段高い水準の人事サービスを提供できるようになりました。
もう一つ大事なポイントについて書きます。どの組織構造もメリットとデメリットがあります。つまり、どの組織構造を選択したとしても、デメリットが構造上発生しえるということです。ここで私が大切にしていることは、デメリットは運用でカバーするようにするということです。別の表現をすると、その組織構造のデメリットを組織構造によってカバーしないということです。
例えば、機能別組織を採用すると、サイロ化による部分最適化というデメリットが構造上起こり得ます。サイロ化による部分最適化は、事業部制組織によって解消することが期待できます。しかし、企業の目標や戦略実現のために機能別組織を採用したのであれば、サイロ化による部分最適化が起きた際に、その解消を理由として事業部制組織に変更しないということです。もし、事業部制組織に変更した場合は、サイロ化による部分最適化は解消されうるでしょうが、一方で今度は事業部制組織のデメリットが起こってしまいます。そうすると、それを解消するためにまた機能別組織に変更するということになりかねません。
では、どうするかというと、企業の目標や戦略を実現するためにふさわしい組織構造を採用したら、その組織構造上起こり得るデメリットについては、運用でカバーしていくことを考えます。例えば、それぞれの職種の能力水準を高める戦略をサポートするために、職種別組織を採用した場合には、構造上サイロ化による部分最適化が起きることが想定されます。そこで、各職種の代表者やそれぞれの階層の人々がより上位の目標を共有したり、その上位目標を達成するためにお互いにどのように協働できるかを話し合ったり、各職種の上長が他部門にどのように貢献できるかをメンバーに話したり、全体最適の視座で行動をしているメンバーを表彰したり、といったことが考えられます。これには、それぞれの組織について今に至るまでの歴史や今のカルチャーも考慮することで、どのような運用をすることがいいのかを考える助けになります。後は実際に運用してみて、その結果を振り返って次のアクションにつなげていきます。
まとめ
今回は、組織構造について述べました。具体的には、以下について書きました。
- 機能別組織とは?そのメリットとデメリット
- 事業部制組織とは?そのメリットとデメリット
- 良い組織とは?
ご覧いただきありがとうございます。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、どのように組織構造を設計・運用されていますか?
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