パフォーマンスマネジメント:評価の納得感を高める方法

パフォーマンスマネジメント

このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。

組織の理解を深めるために、私は、以下の図を使用しています。以前の記事で、パフォーマンスマネジメントを「その年の目標を達成しやすくする仕組み」と定義し、そのための目標設定や目標を達成するための継続的なフォローとその留意点について書きました。今回は、パフォーマンスマネジメントに関する評価について書いてみたいと思います。

 

何を評価するか

パフォーマンスマネジメントは、「その年の目標を達成しやすくする仕組み」です。ですので、何を評価するかというと、目標の達成度合いが挙げられます。では、なぜ目標の達成度合いを評価する必要があるのでしょうか?そもそもなぜ評価があるのでしょうか?

雇用者と被雇用者という関係において、雇用者が求めることに貢献した人に報いることが重要です。それによって、貢献した人は正当な報いを得て更にモチベーション高く継続してその組織で働くことができます。一方で、目標達成に至らなかった場合には、その経験をもとに次回の目標達成に向けた改善点を見つける機会となります。また、その人が自分の強みを発揮できるところを見つけるきっかけになるかもしれません。

では、雇用者が求めることとは何でしょうか?これは、存在意義(Reason to exist)につながります。存在意義とは、その組織が世の中に存在する理由であり、その組織が究極的に達成したいことになります。それをより具体的にしたものが長期目標(Long-Term Goals)であり、その年の会社の目標(Short-time goals)になります。そして、その年の会社の目標を個人に分解したものが、その年のその個人の目標になります。ですので、その年の個人の目標の達成度合いを評価して報いることが重要です。

更に雇用者が求めることには、その組織の価値観(Values)を体現することもあります。組織の価値観とは、その組織で働く人が大切にすることであり、更に言うと守ることです。組織の価値観は目に見えないので、その人が体現しているかどうかは、実際の行動から推察することになります。行動例をリストアップしている組織もあれば、コンピテンシーなどを定義している組織もあるでしょう。

もちろん、組織によっては他の要素もあるでしょうし、それぞれのウェイトも異なるでしょう。その違いは、その組織が社員に求めることの違いであり、その組織から社員へのメッセージでもあります。

 

誰が評価するか

評価者としてふさわしい人は、その人の個人目標の達成度合いと組織の価値観の発揮度合いを具体的に理解している人になります。その観点からいうと、目標を設定し、その目標の達成のために継続的にフォローをしてきた、直属の上長が最もふさわしいことになります。

一方で、評価には評価エラーといわれる、評価結果が変わってしまうことがあります。詳しくは別サイト等で調べていただければと思います。その中でも、印象評価としてまとめられる評価エラーは、エビデンスに基づいて評価することでかなり防ぐことができます。しかし、寛大化傾向や厳格化傾向などは同じエビデンスをみても人によって評価が甘かったり厳しかったりするという評価エラーなので、一人の評価者だけで防ぐことは難しいです。

また、直属の上長が把握しきれないこともかなりあります。そのため、上長が自分が把握している以外のことも知ることができるような仕組みが必要になります。例えば、上長が1次評価者、その上長が2次評価者となってより広い視点で評価をするという仕組みや、直属の上長がその人の取り組み方や組織の価値観の発揮度合いを知っていそうな人の意見を聞いて評価をする仕組み、直属の上長だけではなく複数の関係者の議論によって評価を決定していく仕組みなどが考えられます。

その中から、次のパートでは、複数の関係者で議論をして評価を決定してく仕組みとしてカリブレーションを取り上げます。

 

カリブレーション

カリブレーションは、直属の上長に加えて、複数の関係者が集まってその人の目標達成や組織の価値観の発揮度合いについて議論して評価を決めていきます。同じエビデンスをみて、カリブレーションの参加者がそれぞれどのような評価をするのかについて議論をすることで、寛大化傾向や厳格化傾向に対応することができます。また、複数の関係者が参加することで、直属の上長だけでは把握できなかったエビデンスが共有され、より包括的な議論ができるようになります。

更に、複数の関係者でエビデンスに基づいて包括的な議論をすることで、直属の上長から本人へのフィードバックがより効果的になります。また、カリブレーションの参加者が同じエビデンスに基づいて議論をすることで、自身の評価の傾向や他の人の評価のやり方を知ることもできて評価スキルも向上します。更には、カリブレーションの参加者が自チームのメンバー以外の人々を知る機会にもなり、サクセッションプランニングを考える際に役立ちます。一方で、カリブレーションを行うと、他の仕組みと比べると時間がよりかかります。なので、その組織の状況や評価者の評価スキル等を考慮して時間を調整する必要もあります。

では、具体的にカリブレーションをどのように進めるかについて書いてみたいと思います。いろいろなやり方があると思いますが、ここでは私がどのように進めていたかについて書きたいと思います。

参加者は、直属の上長と同じ部門の同列の管理職とその部門長、その部門を担当しているHRです。直属の上長以外の管理職は、事前にその人について、自分と直接かかわったときのことや自チームのメンバーにヒアリングをしたことをまとめておきます。カリブレーションミーティングの冒頭で、その部門長から、このカリブレーションミーティングの意義や参加者として大切にすること等について話してもらいます。

その後、一人ずつ議論をしていきます。まずは直属の上長より、エビデンスを共有してもらいます。その後、その人について他にエビデンスがある人にそのエビデンスを共有してもらいます。エビデンスが出そろったら、参加者にそれらのエビデンスに基づいてレイティングをつけてもらいます。レイティングが出そろったら、異なるレイティングを付けた人々でなぜそのレイティングをつけたか議論をしてもらいます。そしてそれらの議論を踏まえて最終レイティングを決めていきます。もしも議論が分かれてレイティングが合意されない場合は、部門長が理由とともに最終判断をします。この議論の中で、どういうエビデンスがあれば、一つ上のレイティングになったかについても話し合います。この内容が今後の成長や育成の観点での本人へのフィードバックにつながります。

カリブレーションを始めた当初は、それぞれの参加者の目線が合っていなかったために時間がかかりましたが、何回か行っていくうちに、参加者の目線が合い、時間もだいぶ短縮されるようになりました。

また、私は、評価において大切なことは、評価の納得感だと考えています。特に評価される人がその評価結果に納得することが重要です。パフォーマンスマネジメントは、その年の目標を達成しやすくする仕組みです。具体的には、達成すべき目標を明確にして、その目標に自分なりの意義を感じられるようになり、その目標を達成するための会話を週1回や隔週1回の頻度で継続的に行います。継続的な会話の中には、組織の価値観の発揮についての会話も含まれます。更に、カリブレーションによって、上長が気づいていないことも明確になります。また、よりよいレイティングをとるためのポイントも明確になります。これらを踏まえた最終フィードバックやレイティングの納得感は、高いものになるでしょう。

 

まとめ

今回の記事では、パフォーマンスマネジメントの評価ついて述べました。具体的には、以下の点について書きました。

  • 何を評価するか
  • 誰が評価するか
  • カリブレーション

今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。

最後までお読みいただきありがとうございます。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織との関連はございません。

皆さんは、メンバーの評価をどのようにされていますか?

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