このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。
組織の理解を深めるために、私は、以下の図を使用しています。今回は、サクセッサーマネジメントに焦点を当てたいと思います。

サクセッサーマネジメント(サクセッションプランニング、後継者育成計画)とは?なぜ重要か?
私は、サクセッサーマネジメントを「中長期的にその組織のビジネスの成功を成し遂げ続けるために、タレントパイプラインを構築する仕組み」と考えています。つまり、組織が成長し、ポジションも存在・増加しているにも関わらず、そのポジションを担える人材がいないが故にビジネスの成功を成し遂げられなくなってしまうことを仕組みとして防ぐというものです。
サクセッサーが自然に成長するのを待つだけではなく、サクセッサーになりうる人を特定して、戦略的に育つ環境を提供することによってより迅速かつ確実に成長してそのポジションを担えるようにしていくということで、サクセッサーマネジメントとしています。一般的にはサクセッションプランニングという言葉が使われていると思いますが、意図は同じです。
私は、サクセッサーマネジメントは、2つのフェーズから成ると考えています。特定(Identification)と育成(Development)です。次のパートからそれぞれについて書いていこうと思います。
特定(Identification)
最初のフェーズはIdentificationです。Identificationでは2つのことを行います。サクセッサーマネジメントを行うポジションを特定することと、そのポジションを今後担える可能性が高い人を特定するということです。
ポジションの特定
どのポジションまで特定する必要があるのでしょうか?もちろん組織の状況や規模に応じて異なると思いますが、先ほどの定義(「中長期的にその組織のビジネスの成功を成し遂げ続けるために、タレントパイプラインを構築する仕組み」)から考えると、中長期的にその組織のビジネスの成功を成し遂げ続けるという観点から重要なポジションが対象になります。そのポジションを担える人がいなければ、ビジネスの成功にネガティブな影響を与えうるポジションが対象になります。
ここで重要なことは、特定すべきポジションは、中長期的にその組織のビジネスの成功を成し遂げ続けるために必要なポジションであるということです。つまり、今の延長線上だけでなく、中長期の視点で必要なポジションも考慮に入れる必要があります。そのために、長期目標(Long-Term Goals)を達成するための戦略(Strategy)を考え、その戦略を実現するための組織構造(Organizational Structure)を考えることが重要です。その組織構造から必要なポジションも対象にします。例えば、5年後のゴールを達成するための戦略やそのための組織構造を考えます。この組織構造の中でビジネスの成功を成し遂げ続けるうえで必要なポジションも考慮にいれます。長期目標と戦略、組織構造、サクセッサーマネジメントに整合性があることが重要です。
ジョブディスクリプションなどがあればより具体的に定義されていると思いますが、ない場合はサクセッサーマネジメントの観点からそのポジションを明確にすることが重要です。例えば、そのポジションを担うのに必要なスキルや経験、そのポジションに求められる成果などを文章で表現します。これによって、特定されたサクセッサー候補者がそのポジションを担えるようになるために埋めるべきギャップが明確になり、次の育成(Development)のフェーズにつながります。組織によっては、そのポジションを担うのに必要なスキルや経験、求められる成果が暗黙知になっているところもあると思います。その際は、関係者で言葉にして議論することで、知識の共有と形式知化が進む可能性があります。
サクセッサー候補者の特定
次に、今後そのポジションを担える可能性の高い人を特定します。なぜ可能性の高い人を特定する必要があるのでしょうか?希望する人全員を対象にすることはできないのでしょうか?ここでは、投資の精度を高めるという観点が必要になります。もちろん希望者全員を対象にして、個々に必要な育成を実施できるだけの豊富なリソースがある組織では希望者全員を対象とすることもできるでしょう。一方で、多くの組織ではリソースが限られているため、そのリソースをどのように効果的に活用するかが重要です。詳しくはDevelopmentのところで述べますが、サクセッサーマネジメントでは、サクセッサーがより確実に成長してそのポジションをタイムリーに担えるように、戦略的に成長機会を提供します。戦略的な成長機会の投資に対して、その投資に見合う成長が見込める人を特定することで、組織全体の成長と成功に繋がる効果的な投資を行うことができます。
では、どうやってそのような人を特定するのでしょうか。まずは、本人がそのポジションに対して意欲や興味があることが重要です。本人が望んでいないポジションにアサインしてしまうと、そもそも望んでいないのでモチベーションが下がり期待するパフォーマンスを発揮できなかったり、他の会社で自分が望むポジションを見つけて退職につながったりといったことが起こる可能性が高まります。カルチャーによっては、希望は自分から伝えるものではないというところもあると思います。そのような場合でも、適材適所を実現するためにも、事前に興味や意欲を確認することが重要です。
次に、現在のポジションで期待される成果をどの程度達成しているかを確認します。サクセッサーマネジメントで対象にするポジションは、その人が現在担当しているポジションよりもさらに責任のある役割になることが多いです。より上位ポジションの期待に応えるためには、現在のポジションでの成果が重要です。投資の効果を最大化する観点からも、現在のポジションで期待以上の成果を出していることが重要です。
もう一つの観点は、特定されたポジションで求められる以上の成果を出せる可能性です。ポテンシャルと表現されている組織もあるでしょう。ラーニングアジリティなど、指標を明確にされているところもあると思いますので、詳しく知りたい方は、関連するリソースをご参照ください。ここでは、別の観点での測り方をご紹介します。
一つは、先ほど述べたジョブディスクリプションなどのそのポジションに求められるスキルや経験を具体的に描写したものと比較する手法です。その特定されたポジションで成果を挙げるために必要なスキルや経験とのギャップの度合いによって測ります。例えば、戦略立案のスキルは十分なレベルである一方で、より上位の様々なステークホルダーとのコミュニケーションのスキルはギャップがあるなど、ギャップの程度で測ります。
もう一つは、その特定されたポジションの業務を実際にどのくらい遂行しているかによって測るというやり方です。実際にそのポジションの業務を遂行し、求められる以上の成果を出すことができれば、そのポジションを担う準備ができていると言えます。ですので、その特定されたポジションの業務を一部切り出して担当してもらい、どのくらい自立して求められる以上の成果を出せたかを評価します。この場合は、遂行して成果を出せている業務の割合で測ることになります。
以上、本人の希望があり、現在のポジションで期待以上の成果を出しており、特定されたポジションへの準備水準が高い人に対して、優先的に投資を行い、育成を進めます。
長くなりましたので、Developmentについては、別の回といたします。
まとめ
今回の記事では、サクセッサーマネジメントについて述べました。具体的には、サクセッサーマネジメントの定義や特定(Identification)について書きました。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織との関連はございません。
皆さんは、サクセッサーをどのように特定されていますか?
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