サクセッションプランニング:実践的後継者育成プラン

サクセッサーマネジメント(サクセッションプランニング)

このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。

組織の理解を深めるために、私は、以下の図を使用しています。別の記事で、サクセッサーマネジメントの定義や重要性、特定(Identification)について書きました。今回は、サクセッサーマネジメントの育成(Development)に焦点を当てたいと思います。

 

Development(育成)

Development(育成)のフェーズの目的は大きく2つあると考えています。一つは、Identificationのフェーズで識別された人材が成長する環境を戦略的に整えて、キーとなるポジションへの準備度を高めることです。もう一つは、可能性のあるタレントを底上げして、キーとなるポジションへのタレントパイプラインをより豊富にすることです。

一般的にタレントの準備度を表すカテゴリーとして、“Ready now”や”Ready 〇~〇 years”のような表現が使われているところが多いと思います。”Ready now”ではそのキーとなるポジションへの準備度がすでに整っていることを表し、”Ready 〇~〇 years”では、〇年から〇年以内にそのポジションへの準備度が整うであろうということを表しています。組織によっては、現在そのポジションを担っている人が何らかの理由でその役割を離れることになった場合に緊急事態として当面の間そのポジションを担う人を特定しているところもあるでしょう。”Emergent successor”のような表現をされているところが多いと思います。これらのカテゴリーは、その組織が属するマーケット特性やその組織の状況・戦略等によって異なってくるでしょう。

Developmentの目的の一つ目の準備度を高めるとは、特定された人材がより早く“Ready now”の状態に達することを目指すことです。2つ目のタレントパイプラインをより豊富にするとは、”Ready …”に特定されたタレントの数を増やすということです。

 

レディネスを高めるためのDevelopmentプラン

では、どうやったら識別された人材の成長をより早くすることができるのでしょうか。いろいろな考え方があると思いますので、是非皆さんの組織にあった方法を見つけていただければと思いますが、ここでは私の考え方・方法を共有したいと思います。

私は、そのための環境を整え、機会を提供しフォローすることが重要であると考えます。Identificationのフェーズで特定された人材が、そのポジションで活躍できるようになるために必要なDevelopmentエリアを特定します。この際に、Identificationのフェーズで明確にした、そのポジションに必要なスキルや経験が役に立ちます。この明確にしたスキルや経験と現状のその人材のそれらとの間にあるギャップがDevelopmentエリアになります。ここで留意していることは、どのスキルや経験を強化すれば、そのポジションへの準備度が高まるのかという観点で優先順位をつけるということです。その優先順位の高さに応じてDevelopmentプランを作成します。

 

3つのポイント

Developmentプランを作成する際には、次の3つの観点を重視しています。つまり、Developmentエリアを伸ばすのに適した実際の業務と相談できる人、トレーニングの3つの観点です。

私は、必要なスキルが習得されるには、理解する→使ってみる→振り返る→使ってみる→振り返る→・・・→できるというサイクルを大切にしています。まずは、必要なスキルを「理解」して、そのスキルを「使ってみる」。そして、使ってみてどうだったかを「振り返る」。振り返って得たことをまた「使ってみる」。そしてまた「振り返る」。この使ってみて振り返ることを繰り返すことで、最終的に「できる」ようになっていく。この「できる」ようになることが、そのスキルを習得したということになります。

そのスキルを「理解する」のに適しているのがトレーニングです。トレーニングを通じて、そのスキルがどういうもので、具体的にはどのように活用するのかなどについて学びます。そして、理解したスキルをトレーニングの中で実際に「使って」みます。使ってみることで自身の気づきが生まれ、それを「振り返る」ことで、よりよくするために次の「使ってみる」ことを考えます。このサイクルを自分で回すことに加えて、グループワークであれば一緒のグループの人たちからフィードバックをもらったり、トレーニングの講師からフィードバックをもらったりできると、この「振り返る」の内容が豊かになります。

このスキルを実際に活用できる機会がある業務を特定しアサインすることで、このスキルを習得できる可能性を高めます。キーとなるポジションへの準備度を高めるという観点で考えると、そのスキルを活用する必要があるそのキーポジションの業務の一部をアサインするということも実践的です。習得する=できるためには、理解したそのスキルを実際に「使ってみて振り返りまた使ってみる」というサイクルを頻繁に行うことが重要です。この部分は個性によって異なってくるところもあると思いますので、AIや他の研究の成果を楽しみにしています。

更に、実際の業務を通じて行っている、「使ってみて振り返りまた使ってみる」のサイクルに対して、相談できる人からのフィードバックを得ることで、このサイクルの質が高まり、習得までのスピードが速まることが期待できます。相談できる人は、そのスキルを習得していて、高いレベルでそのスキルを発揮しておりお手本となる人が望ましいです。習得するまでは、使ってみた際に予想とは異なることが起きる場合も多かったり、振り返って次のアクションを考えてもそのアクションに自信が持てなかったりすることもあるでしょう。その際に相談できる人がいると、効率的にスキルを習得できるようになります。また、その人がどうやってそのスキルを身につけたのかや、そのスキルを習得する過程での経験談や課題を乗り越えたエピソードも聞けるととても参考になります。これからそのスキルを習得する際に、経験者の話を聞けることで、成功するためのヒントや注意点を事前に理解してより効率的に習得することができます。また、失敗談が聞けると、お手本となるその人にもこんな失敗をしてきたのだということが分かり、本人のモチベーションにつながることもあります。

 

Developmentプランの実行

作成したDevelopmentプランは、適度に進捗を確認して必要に応じて修正していくことが重要です。私の経験では、立てたプラン通りに進むことは少なく状況に応じて修正していくことでより確実にそのスキルの習得を促していくことにつながります。そのプランしたことの進捗状況を適宜確認し、必要に応じて修正をして更に進めていくことを仕組みとして実行しやすくするためには、パフォーマンスマネジメントに組み込むことも効果的です。必要なスキルを伸ばすために特定した業務をアサインし、その業務の目標を明確にします。そして、その目標を達成しDevelopmentエリアであるスキルを習得することでその人のキャリアビジョンの実現につながることを明確にします。その上で、その目標の達成とスキルの習得のために継続的にフォローして、両方の実現のためのフィードバックをし続けます。継続すべき良いところや成長しているところを称賛し、実現のために新たに始めることや変えるべきことを提案します。

作成したDevelopmentプランの実施をサポートするために、組織のトップとのラウンドテーブルも有効な方法です。少人数のサクセッサー候補者と組織のトップでDevelopmentプランで現在行っているアクションやその中からの学び、成長したと感じる具体的なエピソードなどを候補者から組織のトップに共有します。また、そのポジションに就任できるようになる上での具体的な質問を組織のトップにしたり、組織のトップから心構えや自らのストーリーを語ったりすることも有効かと思います。その際にも組織のトップからスキルを習得する過程での経験談や課題を乗り越えたエピソードも候補者のモチベーションにつながったりするでしょう。

 

タレントパイプラインをより豊富にするためのDevelopmentプラン

以上、”Ready ○~〇 years”などにカテゴライズされた特定のサクセッサー候補者のレディネスを高めるために、個々のDevelopmentプランを作成して実行することについて述べました。リソースが十分ある組織であれば、タレントパイプラインをより豊富にするアクションとしても、同様のアクションがとれると思います。つまり、 可能性のあるタレントを底上げして、キーとなるポジションへのタレントパイプラインをより豊富にするために、その個人のDevelopmentエリアを明らかにし、そのDevelopmentエリアを戦略的に育成するためのDevelopmentプランを作成して実行していくことで底上げにつながると思います。

一方でこのアプローチは個々人を育成するために、個別のアクションプランを作成し実行するため、追加のリソースが求められることがあります。十分なリソースを確保できない組織においては、リソースに応じたDevelopmentアクションの計画を立てることが重要です。例えば、より共通するDevelopmentエリアを特定して、集団としてのDevelopmentプランを作成して実施するなどがあります。具体的にはその集団に対してトレーニングを提供したり、プロジェクトに参加してもらったりなどが考えられます。

 

まとめ

今回の記事では、サクセッサーマネジメントのDevelopmentフェーズについて述べました。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。

最後までお読みいただきありがとうございます。なお、このニュースレターは私の個人的見解であり、所属組織との関連はありません。

皆さんは、サクセッサーをどのように育成していますか?

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