タレントアクイジションの成功法則とは:採用戦略の全貌

タレントアクイジション(採用)

このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。

組織の理解を深めるために、私は、以下の図を使用しています。今回は、タレントアクイジションに焦点を当てたいと思います。

 

重要なポイント

私は、タレントアクイジションでは、「その組織に適した人材を適切なタイミングと予算で採用すること」が重要だと考えています。「その組織に適した」というところをより具体的にすると、「その組織の存在意義(Reason to Exist)長期目標(Long-Term Goals)に共感し、その組織の価値観(Values)と自分のパーソナルバリューに一致する部分がある」ということであり、「その組織の戦略(Strategy)の実現に寄与し、ビジネスの成功に貢献できると期待できる」ということです。「適切なタイミングと予算」は、その市場状況や組織の状況に応じて決定されます。

 

3つのポイント

また、私は、タレントアクイジションはマーケティング活動の一環として捉えられると考えています。そのため、実際に採用活動を設計する際には、「WHO-WHAT-HOW」というフレームワークを参考にしています。このフレームワークの詳細はマーケティングの書籍等をご参照いただければと思いますが、ここでは、私がどのように活用しているのかについて書いてみたいと思います。

「WHO」は、その組織に適した人材のことで、そのような人材がどのような特徴を持っているのかを理解します。「WHAT」は、「WHO」の深い理解で明確になった、その組織に適した人材がどのようなことに魅かれるかに基づいて作成されたキーメッセージです。「HOW」は、そのキーメッセージをその組織に適した人材に届けるための有効な手段になります。

次のパートからは、このフレームワークを活用した採用プロセスについて書いていきたいと思います。採用プロセスは、理解(Understanding) -> リーチ(Reaching) -> 相互選考(Mutual Selection) -> オファー合意(Offer Agreement)と分解できます。また、リーチからオファー合意には並行してアトラクション(Attraction)があります。それぞれより詳細にみていきたいと思います。

 

理解(Understanding)

理解フェーズは、その後のプロセスの基礎となります。その組織に適した人材とはどういった人材なのかをより具体的に定義します。「WHO」をより明確にするということです。「その組織の存在意義や長期目標に共感し、組織の価値観とパーソナルバリューに一致する部分があって、組織の戦略やビジネスの成功に貢献してくれる人材」の定義をより具体的にしていきます。「組織の戦略やビジネスの成功に貢献する」ために、どのようなスキルや経験が必要かを明確にしていきます。

人材要件が明確になったら、そのような人材像を具体的にしていきます。例えば、その人物がどのようなことに興味を持ち、どのようなポイントで就職先を選び、どのような方法で就職先の情報を収集するのかを具体的に理解していきます。その人物像の詳細なモデルを作成する(ペルソナを作成する)のも有効かと思います。

このように人物像を具体化し、明確になったポイントに基づいて、その人材を魅了するためのキーメッセージを作成します。「WHAT」の作成です。その際に、キーメッセージをサポートするポイントも明確にします。自組織がなぜそのキーメッセージを主張できるのか(WHY)を明確にします。

キーメッセージを作成する際には、「WHO」の理解によって明らかになった、組織に適した人材が求めるポイントや魅了されることに焦点を当てることを意識しています。例えば、具体的には、「この組織で働くと、あなたは○○を得られる」というような、その人物の視点に立ってキーメッセージを作成します。

更に、人物像の明確化・具体化によって判明した、そのような人物がどうやって就職先の情報を収集しているかに基づいて、「HOW」を特定していきます。各組織の資金状況に応じて、効果的な手段に投資を行い、優先順位をつけて最適な方法を選択することが大切です。求める人物にその組織の情報が効果的に届く手段を選び、予算を考慮して優先順位をつけます。

ここまでは理解フェーズになります。次のフェーズからは、理解フェーズで明確にしたことを活用して実行していくことになります。

 

リーチ(Reaching)

このフェーズでは、理解フェーズで特定した手段を活用し、求める人材にアプローチして、自組織の選考プロセスに参加してもらいます。昨今の状況を鑑みると、自組織からその人材にリーチすることに加えて、その人材に自組織を見つけてもらうという視点も大切です。

リーチフェーズでは、求める人材に自組織の選考プロセスに参加するという意思決定をしてもらうことがゴールになるので、自組織が採用活動を行っていることを知ってもらうことに加えて、その組織で働くとその人材が求めていることを実現できそうだと感じてもらうことが大切です。そのために、このリーチフェーズからアトラクトも意識していく必要があります。その人材をアトラクトするためには、「WHAT」で作成したキーメッセージとそれをサポートするWHYの要素を活用します。

リーチの手段の特性に応じて、キーメッセージとサポートするWHYの伝え方を調整します。リーチフェーズだと、直接その人材に会って話をするということよりも、文字や映像、第三者を通じた手段等によって情報を届ける、または、見つけてもらうことが多いかと思いますので、それぞれの手段の特性を活用してキーメッセージとサポートするWHYを伝えていくことが重要です。

 

相互選考(Mutual Selection)

リーチフェーズで、求める人材が自組織の存在を認知して「この組織であれば自分が求めていることを得られそうだ」と思えると、その人材は、自組織の選考プロセスに参加するようになります。ここからが相互選考のフェーズになります。

このフェーズでは、自組織がその人材が本当に自組織で活躍できる人材であるかを見極めるために、自組織の設定した基準に基づいて選考することになります。一方で、自組織がその人材を選考することに加えて、その人材自身がこの組織は自分が求めていることを実現できるかどうかを見極められることも重要です。なので、「相互選考」としています。

具体的には、面接では、基準を満たしているかを確認しつつ、その人材が求めるものを得られるかどうかについても確認する双方向の場とします。重要なことは、自組織が選ぶだけでなく、その人材に選ばれるようにすることが重要であり、アトラクトの場でもあります。

自組織の面接の質を担保するために、以下の3つのことが必要です。基準(スケール)、エビデンス、エビデンスに基づいて基準(スケール)に当てはめることです。基準(スケール)は、面接に合格できる水準を明確にします。エビデンスは、実際にその候補者がどのような言動を行ったのか等を収集します。具体的には、私は、「STAR」というフレームワークを活用しています。S:Situation(状況)、T:Task(タスク・役割)、A:Action(行動)、R:Result(結果)を表します。詳しくは別サイト等をご参照いただければと思いますが、それぞれのパートを埋めるように質問していきます。その候補者が、どのような状況で、どういうタスクや役割を担っていて、そのタスクや役割を遂行するためにどのような行動をとって、最終的にどのような結果をもたらしたのかを質問によって明確にします。

「あなたが、今までで成し遂げたと思うエピソードについてお話しください。」という質問を起点に、候補者の返答に基づいて、STARモデルの各部分を深堀りする追加の質問を行います。

そして、STARモデルで明確になったエビデンスが、基準(スケール)のどの水準に当てまるかを考えます。合格水準だと判断した場合には、次のステップに進みます。ここで実務上でのポイントは、面接中はSTARモデルに基づいて情報収集に徹し、面接終了後に収集したエビデンスと基準を照らし合わせてどの水準に該当するかを考えます。

実際にSTARモデルを活用して情報収集をし、基準に照らし合わせて判断をするにあたり、より自信をもって判断できるようになるためには、STARモデルのS:Situation(状況)をより具体的に理解することが役に立ちます。状況をより具体的に理解できると、その人がとったアクションの水準の理解が深まります。一方で、この場合でも構造上、評価エラーが発生する可能性が高いです。STARモデルに基づいたエビデンスベースの評価によって印象評価に基づくエラーは回避されやすいですが、寛大化傾向や厳格化傾向は引き続き防ぐことが難しいです。そのため、複数人での面接とカリブレーションにより、公平で一貫性のある評価につながります。

このフェーズでは、相互選考の観点から、自組織が選ぶだけでなく、候補者が判断できるように情報を提供することが必要です。候補者が求めることを得られるかどうかを明確にするために、質問に真摯に答えます。候補者からの質問がなくても、その候補者が判断するのに役立つ情報も積極的に提供します。

その際に、「WHAT」で作成したキーメッセージとWHYに基づいて情報提供をしていきます。実際の体験談を交えて話すことも有効です。ここでは、リーチフェーズで候補者が「この組織であれば自分が求めていることを得られそうだ」と思えるという水準から、「この組織であれば自分が求めていることを得られるぞ」と実感でき、最終的には確信できる状態になることを目指します。

 

オファー合意(Offer Agreement)

相互選考フェーズで自組織の存在意義や長期目標に共感し、貢献できる人材を具体的に明確にして、一方その人材も自組織で求めることが得られると確信できる状態になっていると、オファー合意フェーズの難易度は比較的低くなります。

このフェーズでは、その人材がオファーをアクセプトする上で懸念がある場合は、それに真摯に向き合い、誠意をもって解消していきます。そして、これらの懸念が解消され、オファーがアクセプトされた後は、入社手続きなどの具体的な準備に入ります。

 

まとめ

今回の記事では、タレントアクイジションについて述べました。具体的には、以下について書きました。

  • タレントアクイジションにおける重要なポイント
  • WHO/WHAT/HOW
  • 理解(Understanding)、リーチ(Reaching)、相互選考(Mutual Selection)、オファー合意(Offer Agreement)

ご覧いただきありがとうございます。自組織に合う人材を具体的に明確にし、候補者をエビデンスベースで理解し、候補者が求めることを確信できるようにすることで、よりミスマッチを防ぎ、お互いにとって良い採用につながります。このような人材が社内で活躍・成長していくことで、すべてのステークホルダーにとって良い状態を実現でき、ビジネスの成功につながっていきます。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。

皆さんは、どのように採用をしていますか?

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