管理職の昇格・降格のポイントと成功要因

昇格・降格

この記事は、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。

組織の理解を深めるために、私は、以下の図を使用しています。今回は、昇格・降格(Promotion/Demotion)に焦点を当てたいと思います。その中でも管理職ポジションについての昇格・降格について書いていきたいと思います。

 

なぜ管理職ポジションは必要?

そもそも管理職ポジションはなぜ存在するのでしょうか。管理職ポジションは、組織全体の効率性や業務のスムーズな運営をサポートする重要な役割を担っている一方で、付加価値創造に直接貢献しているわけでもありません。また、一般的に管理職の給与は非管理職のそれよりも高い傾向があります。管理職ポジションは、以上のような特徴があるため、その存在意義を理解することが重要です。

いろいろなポイントが考えられると思いますが、私は、Span of controlの観点から管理職ポジションは必要と考えます。つまり、組織のトップだけで管理できる範囲が限られるので、管理職ポジションが必要になります。逆に言うと、組織のトップがすべてマネジメントできるのであれば、管理職ポジションは不要ということになります。

例えば、その組織が20名からなる場合、その組織のトップが20名を直接マネジメントできるのであれば、管理職ポジションの必要性は低いかもしれません。わかりやすさのためにここでは簡略化して、マネジメントを上の図の矢印の下段の項目を実践して適切なBehaviorsを促しBusiness Successを実現することと定義します。今の例であれば、組織のトップが20名に対して矢印の下段の項目を直接実践できるのであれば、管理職ポジションは必要ないということになります。一方で、組織のトップ一人では難しい場合は、代わりにそれを実践してもらう役割が必要になります。これが管理職ポジションになります。

つまり、管理職ポジションとは、その組織のトップの代わりに遂行するポジションになります。もちろん、これだけが全てではないので、是非皆さんで管理職ポジションの他の存在意義について調べていただければと思います。

 

昇格に必要なこと

では、その管理職ポジションへの昇格で大切なこと何でしょうか。

先ほどの議論から、管理職ポジションは組織のトップの代わりのポジションであるとしました。つまり、管理職ポジションを担う人は、組織のトップの代わりとして、そのポジションでビジネスの成功を実現できる人材である必要があります。このような人材を組織内から見出すことができることが大切です。その際に、WillとCanの視点が重要だと考えます。

 

Will

まずWillについて書いていきます。Willとは、そのポジションで業務を遂行したいという意欲をその人材がもっているということです。管理職ポジションは組織のトップの代わりとして業務を遂行することが期待されているポジションなので、業務の難易度は高いことが想定されます。難易度の高い業務で自立して継続的に期待以上の成果を出し続けるためには、自らがその役割を担いたいという強い意欲が最低限必要になります。

では、その人材がそのポジションに対して十分な意欲を持っていると理解するためにはどうすればよいでしょうか。私は、その人の個人の価値観とキャリア志向が重要だと考えています。個人の価値観は、その人の良い悪い、好き嫌い、楽しい楽しくない等を判断する基準になるものです。ですので、そのポジションを担うことでその人の個人の価値観をどのように満たすのかが明確になっていると、その人にとってそのポジションを担うこと自体が良い・好き・楽しい等を意味するので、Willを確認することができます。また、そのポジションを担うことで、その人のキャリア志向の実現にどのようにつながっていて役に立つのかも明確になると、更にWillを確信することにつながります。

具体的には、「このポジションを担うことが、自分の価値観とキャリア志向の実現につながる」というテーマで本人にレポートを書いてもらうことが挙げられます。または、昇格面接の中で質問して確認するということもできます。また、ここにとれる時間が十分に確保できるのであれば、上のレポートに基づいて面接をするという手段も考えられます。組織の考え方や状況に応じていろいろ設計できると思いますが、ポイントは、その手段を活用することで、そのポジションを担うことがその人の個人の価値観の実現につながり、キャリア志向の達成に近づくと確信できることになります。

 

Can

続いてCanについて書いていきます。Canとは、その人材がそのポジションに求められるスキルを十分に保有していて、実際に発揮してビジネスの成功を実現できるということです。ここで大切なことは、そのスキルを保有しているだけではなく、実際に発揮できるということになります。つまり、そのスキルを知っていることに加えて、実際に活用できるということが求められます。

では、実際に必要なスキルを活用して発揮できる状態にあると理解するには、どうすればよいでしょうか。以前の記事の記事で書いた内容が参考になります。まずはそのポジションに求められるスキルを明確にしてその人の現状とのギャップを特定します。そのギャップを埋めるためのプランを、「実際のアサインメント」「サポートする人」「トレーニング」の観点で作成します。ギャップを埋めるためのトレーニングを受けてそのスキルを理解し、実際のアサインメントで活用して身に着けていきます。その際にサポートする人からアドバイスをもらうことでより効果的効率的にそのスキルを身に着けていくことができます。

Canでは、そのポジションに必要なスキルを発揮してビジネスの成功を実現していることを把握することがポイントになるので、最もわかりやすいのは、実際にそのポジションの一部を担ってみることになります。その人の現状の習得状況とスキルの習得の仕方の特徴やスピード等を考慮して、そのポジションの業務の一部を切り出してその人にアサインします。その切り出した業務を遂行できるように上長やサポートする人が伴奏していきます。最終的にその人が自立してそのポジションの業務を遂行してビジネスの成功を実現できるようになれば、Canを確認できたことになります。

組織によっては、Canが十分でなくてもそのポジションにアサインするというところもあると思います。その場合は、上長や他の人がこの人がそのポジションを遂行してビジネスの成功を実現できるようにしっかりサポートすることが重要だと思います。ここでは管理職ポジションを前提として議論をしているので、そのポジションにはメンバーが存在します。そのポジションのCanには、チームメンバーに対して上の図の矢印の下段にあるそれぞれを実践してBusiness Successを実現するということも含まれます。チームメンバーに対してこれらのことを実践するスキルやその前提となる関係性が十分でなく上長たちのサポートも十分でない場合には、その結果、優秀な人材が離職するリスクが高まる可能性があります。

 

誰が判断するか?

その人材が、そのポジションを担うのにWillとCanが十分な状態になっているという判断は誰がするのでしょうか。最もエビデンスを持っているのは、一般的にその人に近い直属の上長になるでしょう。管理職ポジションの存在意義を考えてみると、その組織のトップの代わりなので、その組織のトップもかかわることが重要です。組織のトップが自らかかわり、その人にそのポジションを自分の代わりとして任せられるかという視点で判断していきます。判断するためには、実際にどのような状況でどのような言動をしたのかというエビデンスベースで考えていきます。これは、WillにもCanにも通じます。

組織のトップがかかわることが現実的でない場合は、権限移譲の範囲を明確にすることが必要ですが、直属の上長などだけが一人で判断するのではなく、複数の関係者の意見を取り入れることが重要です。その一人がかかわれる時間や得られるエビデンスにはそもそも限りがあります。また、その一人だけで判断するとなると、構造上その人の認知できる範囲においてそれ相応の言動をすればよいという行動を促すことにもつながりかねません。また、その一人だけが決定権限を持っている構造だと、エビデンスや判断の根拠が不透明になると、その人が不必要な権力を持ってしまうことにつながりかねません。こういったことが相まって、組織が目指すカルチャーと異なる方向に進むリスクがあります。

ではどうしたらよいでしょうか。まずは組織のトップがかかわることが必要ですが、難しい場合は組織のトップの視点でかかわれる代理の人が必要です。そして、そのポジションを担えると確認できるWillとCanのエビデンスを持っている人々が必要です。更に公正性の観点からHRも入った方がいいでしょう。HRの役割としては、エビデンスベースでの議論を促し、参加者が合意できるようにファシリテーションをしていくことになります。このように複数の関係者でエビデンスに基づいて議論をしていき、そのポジションを担うにふさわしい状態になっているかを合意していくことが重要です。

 

降格

このようなことによってそのポジションに最適な人材が昇格していくようになるので、そのポジションへのミスマッチは極力なくしていくことができるでしょう。それでもミスマッチが起きてしまった場合は、パフォーマンスマネジメントに基づいてそのポジションの期待に応える成果を出せるように本人はもちろんのこと、上長もサポートしていく必要があります。万が一それでも難しい場合は、降格という選択になるかもしれませんが、降格という選択をしなくて良いように、昇格をしっかりマネジメントしていくことが重要です。

 

まとめ

今回の記事では、昇格・降格について述べました。ご覧いただきありがとうございます。WillとCanの状態を具体的に理解して、関係者でエビデンスに基づいて決めていくことで適切な人材を昇格することができ、ミスマッチを防ぐことにもつながります。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。

皆さんの組織では、どのような方法で昇格を行っていますか?

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