このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。
組織の理解を深めるために、私は、以下の図を使用しています。今回は、その理解に基づいて、どのように提案を作成するのかについて書いてみたいと思います。

私は、ビジネスの成功に貢献するHRのプロフェッショナルとして、上の図を活用して組織の状況の理解を深めています。それぞれのHRの仕組みによって従業員がビジネスの成功に自ら積極的に貢献し、主体的に行動することで、結果としてビジネスの成功が実現されます。つまり、HRの仕組みを深く理解することで、従業員の行動を理解し、将来の行動を予測することができます。従業員の言動の理解を深めることで、ビジネスの成功に向けたさらなる改善点を見つけ出すことができます。
以下の観点でHRの仕組みの理解を深めます。
- その仕組みの意図は、明確になっているかどうか
- その仕組みの中身は、意図を効果的に実現しているかどうか
- その仕組みの運用は、中身と意図を効果的に実現しているかどうか
- それぞれの仕組み間の整合性はとれているかどうか
これらの観点で理解を深めることで、現状のHRの仕組みを色分けすることができます。従業員の言動にプラスの影響を与えている場合は緑、意図しない影響を与えている場合は赤、より良いものに改善できる場合は黄色のように色を塗ることで、一見して現状のHRの仕組みの状態を把握することができます。
現状の分析に基づいて提案を作成していきます。
達成すること(What to achieve)
提案書には、まず達成することを明確にします。この提案を実行することで何を達成したいのか、どのような状態を実現したいのかについて記述します。目的のように表現されることもあるでしょう。今回の提案では、上の1から4の観点で作成するのが実践的です。例えば、パフォーマンスマネジメントの中身が意図を実現するものになっていないことが明確になったら、「パフォーマンスマネジメントの意図を実現する中身を作成する」のようになります。他の例としては、パフォーマンスマネジメントの意図が明確で中身も意図を実現する内容になっている一方で、運用がそれらを実現するようになっていない場合には、「従業員が、パフォーマンスマネジメントの意図を実現する運用ができるようにする」となります。
私は、提案書において、この「達成すること」が非常に重要であると考えています。達成することはいわば到達点になるので、ここをより明確にすることができれば、この後の内容はより容易になっていきます。上の例でも、「従業員」が特定の従業員の場合には、その特定の従業員まで明確にすることができますし、運用の問題がより具体化されればその内容を記述することになります。例えば、「マネージャーが、パフォーマンスマネジメントの意図を実現する目標設定を行えるように支援する」とすることもできるでしょう。パフォーマンスマネジメントの意図が正しく理解されていれば、「パフォーマンスマネジメントの意図を実現する」の部分を削除し、「マネージャーが目標設定をより効果的に行えるよう支援する」とすることもできます。パフォーマンスマネジメントの意図が正しく理解されている前提なので、「より効果的に」というあいまいな言葉を使っても同じ解釈を期待できます。私の個人的な経験では、現状の構造の理解が深まれば深まるほど、達成することはより簡潔に表現できるようになります。
なぜ今(Why now)
達成することの次は、「なぜ今」を書きます。なぜこの提案を今行う必要があるのか、背景を含めた現状の構造を記述します。その中でも最も重要なことは、課題を明らかにすることです。課題を明確に特定できると、それを解決する案を考えられるようになります。ここでポイントは、取り扱うトピックにもよりますが、課題を特定するために時間をかけすぎないということです。時間をかけていろいろ調べたり議論したりすることで課題を特定しやすくなる可能性はありますが、それによって今起きている問題がより大きくなってしまったり時期を逸してしまったりしては本末転倒です。
提案(Proposal)
その次の項目は、提案です。「なぜ今」で特定した課題を解決して、達成することを実現するためには、どのようなことを行えばよいかを記述します。まずは、課題を解決して達成することを実現すると考えられるオプションを出していきます。ここでは内容は考慮せず、考えられる案を出せるだけ出すことを優先します。数を出し切ったら、次に、中身を精査します。その際に、それぞれの案のプラス面とマイナス面を羅列します。ここでポイントは、プラス面とマイナス面をリストアップした後に、マイナス面を克服することができるか、または少なくとも問題とならないレベルにできるかどうかを考えます。実践的な観点から、プラス面とマイナス面を考える際に、A案のプラス面がB案のマイナス面にリストアップされ、それぞれを網羅するだけではどの案がより良いのかを考えることが難しくなることがあります。そのために、私は、マイナス面を克服することができるかを考えます。どんなに大きなメリットがあっても、その案を採用することで生じる課題を克服できない場合や、別の大きな問題を引き起こす可能性がある場合、その案は採用を見送ることになります。
その上で、残ったオプションをすべて実行できるリソースがあれば、その残ったオプションを提案とします。リソース的にそのオプションをすべて実行することが難しい場合は、実行のしやすさと効果の2軸で更にオプションを検討します。ここで、実行がしやすく、かつ、効果も高いところにプロットされたオプションに絞ります。
提案が特定されたら、「このオプションを実行すると、課題が解決され、達成することを実現できるか」の観点で再評価します。実践的な観点から、提案を作成する際には、提案の作成が目的とならないで、達成することを実現することが主な焦点となるようにすることが重要です。そこで、提案が特定された後に、敢えて「この提案を実行すると、達成することを実現することができるか」と自らに問いかけることで、より質の高い提案を作ることにつながります。
実行するための提案の詳細化
提案の次は、実行するために提案の詳細化を行います。具体的には、その提案を実行するために必要なアクションに細分化して、そのアクションを、誰が、いつまでに行うかを明確にします。その提案を一人で完結できる方が稀であるので、誰からどのような協力を得るのかを明確にすることも重要です。
提案の詳細化が終わったら、ここでも「これらのアクションを実行すれば、達成することを実現できる」と自分が自信をもって思えるかどうかを確認します。もしも自信をもちきれない場合は、それはどこからきているのかを特定して、どうすれば自信が持てるようになるのかを考えます。場合によっては、周りの同僚や上長に相談することもできます。
ネクストアクション
最後に、この提案書がビジネスリーダーとアラインできた後にどのようなことを行うのか、ネクストアクションを書きます。
達成することからネクストアクションまで一通り書き終えたら、もう一度全体を見直します。ここでのポイントは、「特定された課題を、この提案を実際の詳細のアクションを実行することで解決でき、達成することを実現できるか」という観点で見直します。この見直しをより有効に行うために、私は最初のころはA4サイズ1ページでまとめることを心がけていました。実際、詳細に理解を深めると、A4サイズ1ページにまとめることができました。そうでない場合は、どこか理解が浅いところがあるというサインとして考えていました。
まとめ
今回の記事では、提案について述べました。ご覧いただきありがとうございます。
達成することを明確にして、その達成することを実現するための提案を作成していくことが重要です。いわば目的と手段とその整合性を明確にするということです。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんの組織では、どのように提案を行っていますか?
コメント