このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。
私は、ビジネスの成功をステークホルダーの成功と考えています。具体的には、社員のより高いエンゲージメント、顧客の満足、投資家の満足、コミュニティからのレピュテーション、経営陣の満足などから構成されています。よりエンゲージメントの高い社員が、より良い商品やサービスを顧客に提供することで顧客の満足を実現し、満足した顧客がリピートをしたり他の顧客を生み出してくれたりすることで財務的な結果を向上し、それによって投資家の満足を実現します。社員のより高いエンゲージメント、より高い顧客や投資家の満足を実現し続けることで、コミュニティからより高いレピュテーションを得ることができます。その組織の存在意義を追求した結果としてこれらの成功を実現できたという意味で、その組織の経営陣の満足にもつながります。
このループのスタート地点として、エンゲージメントの高い社員が重要になります。エンゲージメントの高い社員が組織の求める行動をとることで顧客満足につながっていきます。そこで、HRや組織マネジメントを行うリーダーたちが参考にするポイントとして、下の図を作成しました。それぞれの詳細は、以前の記事を参考にしてください。

今回は、視点を変えて、従業員が組織の求める行動をより高い次元で発揮し続けるポイントを書いてみたいと思います。そのポイントは、大きく分けて、従業員の能力を高めることと、従業員が持っている能力を発揮することの2つからなります。
従業員の能力を高める
従業員の能力を高めることには、大きく2つの方向性があります。一つは、今の能力の水準をより高くすること、もう一つは今持っていない能力を習得することです。方向性は2つありますが、より重要なことは、今その従業員が担っている役割でより高いビジネスの成功に関する成果を出すために必要な能力の観点で考えるということです。
能力を高めるという観点で、今回は守破離の考え方を今の環境に合わせて活用する方法について書いてみたいと思います。
守(守る)
守は、守るということを意味します。ここでは、その組織が保有する今の成功パターンを「守る」ということになります。つまり、その組織の成功パターンを学び習得するということです。例えば、新しい役割にアサインされた際には、その役割の成功パターンを習得することに努めます。前任者や同様の役割を担っている人に話を聞いたり、実際に行っていることを真似てみたりします。
破(破る)
一通りの成功パターンを習得出来たら、次は破になります。破は、今の成功パターンを破るということです。習得した今の成功パターンを守り続けるのではなく破り、自分なりのやり方を試してみる段階です。今の成功パターンを習得してできるようになったからこそ、「ここはこうするともっと良くなる」や「ここはこうしたほうがより効率的になる」のような考えが出てきます。その考えを実践して試してみます。
離(離れる)
最後の段階が、離です。離は、破で試してみたことを確立し、今までの成功パターンから離れるということです。離の段階になると、自分なりのやり方が確立され、更に今までの成功パターンよりもより良いものになっています。イノベーションが生まれたといってもいいでしょう。
従業員の能力を高めるという観点でいうと、守はその役割を担う上で必要な能力を習得し、破で自分の強みを生かして試行錯誤し、離によってイノベーションをおこしてより良い成果を実現するということもできます。そして、次の役割に異動してまた守から始めます。これがキャリアを築いていくということにもなります。
従業員の能力を発揮する
従業員の能力を発揮するとは、従業員が現在持っている能力をしっかりと発揮できるような環境を整えるということです。つまり、従業員が、エンゲージメントが高く、ビジネスの成功のために自らの役割に求められる成果を出そうと自発的に行動するということです。一方で、様々な調査結果によると、従業員全体が常に高いエンゲージメントを維持することは難しいことがわかっています。持っている力を最大限に発揮できる従業員が多い組織は、ビジネスの成功をより実現しやすいと言えます。以下では、私が自分の力を十分に発揮するために行ってきたことを書いてみたいと思います。
今の状態に気づく
自分の力を十分に発揮できていない時は、いくつかの兆候があります。例えば、集中力が散漫になっていたり、他のことが気になったり、気分が落ち込んでいたり、時間が過ぎるのが長く感じたりといったことです。こういった兆候に気づくために、適度に今の自分の状態を客観的に把握するようにします。自問をしてみたり、呼吸を大きく整えたり、自分の頭に浮かんでくることや消えていくことを眺めたりしてみます。そのようなことを通じて、自分の今の状態を感情も含めて自分で文章化します。
そもそもなぜこの仕事をしているのかを考える
自分の今の状態を文章化することができたら、次にそもそもなぜ自分は今この仕事をしているのかについて考えます。以前に考えたことがあれば、それを思い出します。そもそもなぜ自分はこの仕事を選んだのか、この仕事をすることでどんなことを達成したいのか、自分のパーソナルバリューをどのように満たせるのかなど、を思い出します。自分がこの仕事を始めた時のことを思い出すことも、なぜこの仕事をしているのかについて明確にするのに役立ちます。
とるべき感情を選ぶ
その次に、どのような感情を選ぶべきかを考えます。自分がそもそもなぜこの仕事をしているのかが明確になったら、その上でどんな感情がそれにふさわしいのかを考えます。自分がこの仕事を通じて実現したいことやビジネスの成功に貢献することを達成するためには、どのような感情を選ぶと良いのかを明確にします。そして、自分の意志でその感情を選ぶことを文章化します。それまでは、こういう状況だとこういう感情が自動的に選択されるという環境だったので、最初の頃は感情を自分で選ぶということは難しかったです。しかし、自分や組織にとってより良い明日や未来のために適切な感情を自分で選ぶべきだし選ぶことができるという考えに出会って、意識的に訓練することで、スキルとして習得できました。
次のアクションを具体的に考える
最後に、次にとるアクションを具体的に考えます。この後すぐにどのようなアクションをとるのが良いのかを明確にします。このアクションは、自分の意志でコントロールできる自分のアクションになります。
自分の持っている能力をしっかりと発揮することが難しい環境は往々にして起こり得ます。多くは自分の意志やコントロールできる範囲外の要因によるところもあります。しかし、その環境に影響されて自分の力を十分に発揮できない結果になるのではなく、その環境を制約条件として、その上で自分の意志で自分でコントロールできることに集中し、求められる以上の成果を出していくことを自力で選んでいくこともできます。
まとめ
今回は、従業員が組織の求める行動をより高い次元で発揮し続けるポイントについて述べました。具体的には、以下について書きました。
- 能力を高める
- 守:その組織の成功パターンを学び習得する
- 破:自分なりのやり方を試してみる
- 離:破で試してみたことを確立し、今までの成功パターンから離れる
- 持っている能力を発揮する
- 今の状態に気づく
- そもそもなぜこの仕事をしているのかを考える
- とるべき感情を選ぶ
- 次のアクションを具体的に考える
ご覧いただきありがとうございます。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、従業員の能力を高め、その能力を十分に発揮できるようにどのようなアクションを行っていますか?
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