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以前の記事で、傾聴について書きました。私が考える傾聴について述べ、第一段階から第三段階について議論しました。
今回は、傾聴のスキルをより効果的にするためのコミュニケーションスキルについて書いてみたいと思います。
コミュニケーションのスキルとは?
私は、そもそもコミュニケーションのスキルを、「相手が望む行動を自分が行い、自分が望む行動を相手が行うようにする」スキルと考えています。この「行動」には、アクションを行うという意味も含みますが、「知る」「理解する」等も含みます。ですので、コミュニケーションスキルは幅広いと考えていますが、今回は傾聴のスキルをより効果的にするためのコミュニケーションスキルに絞りたいと思います。それは、大きく「明確化(Clarification)」「確認(Confirmation)」「提案(Proposal)」の3つから成ります。
明確化(Clarification)
明確化は、「相手が言っていることで、自分が理解できていないことを理解できるように明確にする」ということです。これは単に意味の分からない言葉を知るところから、複雑で理解できない文章を明確にすることや、同じ言葉でも解釈の異なるものを明確にするなども含まれます。
意味の分からない言葉や複雑で理解できない文章や表現について、明確化によって理解できるようにするということについては、イメージしていただけると思います。例えば、「Dominant戦略」という言葉は、戦略論になじみのない人にとっては耳慣れない言葉かもしれません。そういった人が、会話の中で「Dominant戦略」という言葉が出てきた際に、それはどういうものであるかについて質問をして理解することが重要です。
また、主語と述語が複雑になっていたり、途中で変わってしまったりしている場合は、相手が言っていることを理解することが難しくなりがちです。そのような場合には、質問によって「誰が何をどうした」のようにシンプルにしていくことで理解しやすくすることができます。
では、同じ言葉にも関わらず話し手と聞き手で解釈が異なることがあるのはなぜでしょうか。それは、その人が今までに経験してきたことが解釈に影響を及ぼしているからと考えます。
それを実感していただくために簡単なエクササイズを行ってみましょう。深く考えずに気軽に行ってみてください。可能であれば、何人かで行っていただくと、より実感していただきやすいと思います。
1つ目の質問です。「おいしい食べ物をイメージしてください。」
どんな食べ物を想像されたでしょうか。
2つ目の質問です。「場面をイメージしてください。家があります。その前に庭があります。その隣に車があります。」
どんな家や庭、車を想像されたでしょうか。また、家と庭、車はどのように配置されているでしょうか。
1つ目の質問は、「おいしい」という形容詞があります。形容詞は主観になりがちな言葉なので、人によって違いがでることは想像しやすいでしょう。一方で、2つ目の質問は、「家」「庭」「車」という名詞があります。名詞は形容詞ほど主観が大きく影響する言葉ではないですが、人によって想像する「家」「庭」「車」は異なっていることが多いでしょう。
また、同じ人がこれらの質問について考えたとしても、状況によって想像するものが異なってくることも想定されます。例えば、その質問を聞く少し前に印象深い車の記事を読んでいた場合には、その車を想像するかもしれません。しかし、同じ質問を2日前に聞いたとしたらその時に想像した車は別のものかもしれません。
以上のように、同じ言葉を聞いても人によって解釈が異なることが起こり得ます。そのために、同じ言葉の解釈も同じになるように明確化をすることが必要です。
ビジネスの成功の観点から言うと、例えば、従業員の「エンゲージメント」という言葉が当てはまるのではないかと感じています。人によって、「エンゲージメント」を「満足(Satisfaction)」の解釈で使っていることに遭遇したことが多いです。従業員の「エンゲージメント」が高まるためのアクションと「満足(Satisfaction)」が高まるアクションは異なることもあるので、明確化によって解釈を合わせることは重要です。
確認(Confirmation)
確認は、「自分が、相手の言っていることを正しく理解しているかを確認すること」です。以前の記事で扱った、傾聴のスキルでいうと、第三段階の傾聴に役立つものです。第一段階や第二段階の傾聴を行う際に、明確化のスキルは非常に役に立ちます。明確化のスキルを駆使しながら、第一段階と第二段階の傾聴を行うことで、相手の状況を理解したうえで言っていることが明確になり、本当に伝えたい意図を想像できるようになってきます。そこで、確認を活用して、自分が想像した話し手が本当に伝えたいことを確認します。
具体的には、「私があなたの言っていることを正しく理解したとしたら」や「間違っていたら指摘してほしいのですが」のような言葉を枕詞として、自分が想像した相手が本当に伝えたいことを「私は、あなたは○○とおっしゃりたいのではないかと思いました。いかがでしょう?」のように言って確認していきます。
確認をすることで、誤解を回避しやすくなります。相手が伝えたいと感じたことを自分の理解に基づいて確認することで、正しく理解できているのか、それともそうではないのかを明確にすることができます。自分の理解が正しければ、確認後の相手の反応は「その通り」となるでしょう。一方で、正しく理解できていない場合は、相手の反応が悪かったり、「ちょっと違うかな」などの返答になったりするでしょう。その際は、「正しく理解できていなさそうですね。どこが違うか、おっしゃっていただけますか?」のように質問することで、自分の理解が違うところを明らかにして、より正確に理解できるようになります。その結果、誤解を回避しやすくなります。
また、確認によって、相手との信頼関係を向上することにつながったりします。確認によって、相手は、自分が伝えたいことを正しく理解してもらっていると感じられます。「伝わった」「わかってもらえた」のように感じられます。これによって、相手は、「この人は自分をわかってくれている」という想いを持てるようになり、信頼を持てるようになります。
提案(Proposal)
確認によって、相手が本当に伝えたい、わかってほしいと思っていることを相手に確認できた後に、提案を行います。この段階では、相手は、「自分が話したい・伝えたいと思っていることを十分に話せた」と感じています。更に、それを相手が正確に理解してくれているので、「自分の伝えたいことが伝わった」、「この人は自分をわかってくれている」というように感じています。私の経験では、このような状態になると、多くの人が、他の人の話に耳を傾ける準備が整った状態になっていることが多かったです。そこで、必要な提案を行います。
その後、その提案に対して、明確化、確認を行って次の提案をしていくということを通じて、その会話のゴールを達成していきます。
まとめ
今回は、傾聴のスキルをより効果的にするためのコミュニケーションスキルとして、以下の3つについて書きました。
- 明確化(Clarification)
- 確認(Confirmation)
- 提案(Proposal)
ご覧いただきありがとうございます。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、「明確化(Clarification)」「確認(Confirmation)」「提案(Proposal)」のスキルをどのように活用していますか?
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