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今回は、面接のスキルについて書いてみたいと思います。
面接のスキルとは
私は、面接のスキルを、「自組織で活躍できる可能性を持つ人材を見極め、選ばれるようにする」スキルと考えます。昨今の状況を鑑みると、面接者が候補者の中から適切な人材を「見極める」ことに加えて、その候補者から「選ばれる」ようにすることも重要になっています。
面接のスキルは、大きく分けて4つから成ります。「評価基準を理解する」「エビデンスを集める」「エビデンスと基準を照らし合わせて適切な評価をつける」「アトラクトする」の4つです。以降でそれぞれについて詳細に議論していきます。
評価基準を理解する
面接の最初のスキルは、「評価基準を理解する」です。それぞれの組織に評価基準が設けられていると思いますので、それを理解します。これは、面接が始まる前までに行います。例えば、コンピテンシーがある組織では、そのコンピテンシーについて理解します。具体的には、それぞれのコンピテンシーの定義と、そのコンピテンシーのスケールの定義について理解します。
特に、コンピテンシーのスケールについては、面接で期待される水準について理解します。その上で、それ以外のレベルについても理解するようにします。例えば、評価スケールが1から5の5段階で構成されている場合、期待される水準が3のレベルだとすると、少なくとも3の定義を理解し、どのような水準であれば、面接で合格と判断されるかについて理解します。その上で、残りのスケールについても理解するようにします。
エビデンスを集める
次は、「エビデンスを集める」です。これは、主に面接中に行います。どんなエビデンスを集めるかというと、その面接の合否を決めるのに必要なエビデンスを集めます。ここからは、コンピテンシーに基づいて評価を行うという前提で書いていきます。いくつかのフレームワークがあると思いますが、ここでは、「STAR」に基づいて書いてみます。
「STAR」とは、Simulation(状況)、Task(タスク・役割)、Action(アクション)、Result(結果)のそれぞれの頭文字をとったものです。つまり、どういった状況で、どのようなタスクや役割を担っていて、どのようなアクションを行って、そしてどのような結果をもたらしたのかについて質問をして、エビデンスを集めていきます。
STARに基づいてどのようにエビデンスを集めていくかというと、まずはエビデンスを集めたいコンピテンシーについてざっくりとした質問を行い、候補者の返答を受けて、それぞれについてより詳細に理解するように質問を行っていきます。
例えば、「チームワーク」のコンピテンシーについてのエビデンスを集める場合には、「チームワークを発揮して成果につなげた時のエピソードについて話してください。」のように、まずは大くくりの質問をします。そして、候補者の返答を受けて、STARのそれぞれのパートを埋めていくために詳細な質問をしていきます。
「Situation」について理解を深めるためには、「その時の状況についてもう少し詳しく教えてください」のように追加で質問をしていきます。「Situation」の理解を深めることで、発揮したコンピテンシーの水準をより特定しやすくなります。「チームワーク」のコンピテンシーであれば、チームのおかれた状況や、チームの人数、それぞれの関係性などの理解を深めると、状況の困難度等をイメージしやすくなります。
例えば、チームの人数が3名の場合と100名の場合では状況が違います。また、同じ3名でも、その3名が同じ方向を目指して協力し合っている場合と、ばらばらの方向を向いて協力体制が乏しい場合でも状況は違います。
「Situation」で、具体的にどのような内容の理解を深めればよいのかというと、「評価基準を理解する」で行ったことが役に立ちます。そのコンピテンシーの定義やスケールの定義を理解することで、どのような観点が必要かについて明確になっています。その観点を明らかにするように質問によって理解していきます。
「Task」の理解を深めるためには、「その状況で、あなたはどのような役割を担っていたのですか」のように追加質問をしていきます。役割や期待されていた成果などについて理解するようにします。例えば、組織長として組織としての成果を出すことが期待されていたのか、それとも組織のメンバーの役割を担っていて組織を率いることは期待されていなかったのかなどが明らかになると、その後の「Action」のレベル感が分かりやすくなります。
ここまで「Situation」と「Task」について書いてきましたが、この2つを具体的に理解できると、この後の「Action」や「Result」の水準をより適切に判断できるようになります。
「Action」の理解を深めるためには、「そのような状況で、あなたは最初どのようなことを行いましたか」のような追加質問をします。そして、「その後はどのようなことをしたのですか」のように更に追加で質問していきます。重要なポイントは、「その候補者が、どんなアクションを行ったか」を理解するということです。他の人ではなく、その候補者が実際に行ったアクションについて理解を深めます。
最後に「Result」について理解を深めます。「どのような結果になりましたか」のように追加質問をします。「Situation」を詳しく理解して、「Task」でその候補者に期待されていることを理解していると、この「Result」で理解した内容の水準を判断しやすくなります。
以上、STARのフレームに沿って書いてみました。慣れてくると、コンピテンシーごとに大くくりの質問をするところから、より大くくりの質問から始めて、候補者の返答によって関連するコンピテンシーに分かれていくこともできます。例えば、「ご自身でやり遂げたと思うエピソードについて話してください」という質問から始めて、候補者の返答によって関連するコンピテンシーを選んで更に質問をしていきます。これによって、面接の時間を短縮することにもつながりますし、面接自体の流れがより自然になります。
「エビデンスを集める」で重要なことは、コンピテンシーのスケールを判断するのに必要なエビデンスを集めることに集中し、面接中にスケールの評価を決めつけないということです。スケールの基準に対する判断は、面接が終わった後に行います。そのため、「エビデンスを集める」段階では、面接後に適切な判断ができるように必要な情報を集めてメモにしておきます。
特に、STARのフレームでエビデンスを集める場合、質問をして、相手の返答を聴いて、その内容がSTARのどこを満たしていてどこを満たしていないかを理解し、必要な情報をメモして、STARの満たしていないところを満たすための質問を考えて、その質問をして、というように、限られた時間の中で行うべきことがたくさんあります。その中で、どのコンピテンシーのスケールがどの水準にあるのかの判断まで行うのは非常に難しい作業です。場合によっては、印象に残っている情報だけで評価をしてしまったり、面接の最後に得た情報が、全体の評価に過度に影響を与えてしまったりする可能性もあります。
面接は、「自組織で活躍できる可能性を持つ人材を見極め、選ばれるようにする」ものなので、そのような人材を見極めて自組織に参加してもらえれば、組織が強化され、より良いビジネスの成功につながります。一方で、ミスマッチが起きてしまうと、自分にとっても候補者にとっても、また、自組織のメンバーにとっても、新たな課題への対応や調整が必要になることがあります。ひいては、ビジネスの成功の観点からも好ましくない状況をもたらしかねません。「エビデンスを集める」では、評価スケールの判断はせず、エビデンスを集めることに専念することが重要です。
少し長くなりましたので、「エビデンスと基準を照らし合わせて適切な評価をつける」以降については、次の記事にしたいと思います。
まとめ
今回は、面接のスキルについて述べました。その中でも、面接のスキルとはどのようなスキルなのかについて私の考えを述べ、具体的なスキルとして、「評価基準を理解する」と「エビデンスを集める」について書いてみました。ご覧いただきありがとうございます。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、どのように面接をされていますか?
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