組織の価値観(Values)の重要性と浸透の方法

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このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。

組織の理解を深めるために、私は、以下の図を使用しています。今回は、組織の価値観(Values)に焦点を当てたいと思います。

 

価値観(Values)とは?(私の定義)

私は、組織の価値観を「その組織で働く人が大切にすること」、さらに言うと「その組織で働く人が守ること」のように定義しています。

 

なぜ組織の価値観が重要なのか?意義は?

存在意義(Reason to Exist)によって、その組織が世の中に存在している理由や究極的に達成したいことが定められ、長期目標(Long-Term Goals)によって、その組織の当面の目標が明確になります。つまり、目指す方向や到達点が定まります。

法令遵守が組織にとって不可欠な前提条件ですが、その到達点にたどり着くことが企業にとっては重要なことになるので、一見すると、到達できればある意味道筋はそれほど重要ではないように感じられます。

私は、組織の価値観はこの道筋にある程度の枠を設けるものと理解しています。ひいては大小様々な意思決定の枠組みや日々どのような行動をとるべきかについての基準になるものと考えます。つまり、組織の価値観は、その組織らしさを定める重要な要素の一つであり、その組織の文化の源泉の一つになります。

組織の価値観が明確に存在して、社員一人一人に浸透していると、ある事象に対してどのような行動をとればいいのか、逆にどうような行動はとってはならないのかを判断する大切なよりどころになります。

また、組織の価値観は、複雑で急激に変化し前例に頼れないビジネス環境において、意思決定をする際の基準になります。組織の価値観によって、日々の行動や意思決定の基準となり、物事がより迅速になされるようになります。また、困ったときのよりどころにもなります。

ここまで組織の価値観がなぜ重要なのかについて書いてきました。では、その組織の価値観はどうやって作っていくのでしょうか。次のパートでは、組織の価値観の作り方について書いてみたいと思います。

 

組織の価値観をどのように作るか?

組織の価値観は、その組織が大切にしていることを定めたもので、日々の行動や意思決定の基準であり、よりどころになるものです。その組織らしさを決める大きな要因でもあり、組織文化に大きな影響を与えるものでもあります。

ですので、その組織の存在意義と強い関係があります。なぜ他の組織ではなく、その組織が存在する必要があるのかを紐解いていくと、組織として何を大切にするのかを考えるヒントがあります。

例えば、創業者がなぜ他の会社に勤めるのではなく、自分で事業を立ち上げたのかを深堀していきます。創業者がどんな想いをもっていたのか、具体的にはどんなことを行って、逆に行わなかったのかについて事実も含めて理解し、事実でカバーしきれないところはその創業者になったつもりで多様な視点で想像力を働かせます。

また、ある程度の歴史のある組織では、重要な転換点を経験していることもあると思います。その転換点の状況を理解し、他の選択肢もある中でなぜその意思決定を行ったのか、また他の選択肢を選ばなかったのかについて理解を深めます。

更にその組織を語るうえで、象徴的なエピソードもあると思います。そのエピソードを深堀して、なぜ他の行動ではなくその行動がとられたのかについて考えてみます。

以上のように過去の理解を深めることで、その組織らしさやその組織として共通していることを把握していきます。

そのうえで、現在やこれからのビジネス環境を考慮して、そのままあてはめられるのか、それとも変えた方がいいのかについて検討します。私の経験では、ビジネス環境は変わっていくものなので、今や近い将来のビジネス環境の観点で考えるのではなく、今後変わっていくビジネス環境においてもそれを超越するような普遍的で多様な観点で修正していくのが良いです。

組織の価値観を作成する際に、さまざまな観点が生じ、多くの場合、その数が増えることがあります。しかし、実務的な観点からは、組織の価値観の数はより少ない方が日々の活用に適しています。多すぎると理解や記憶が困難になり、実践される可能性も低くなります。経験的には、5つ以下に抑えることが実践しやすいです。したがって、最初から5つまでに制限し、組織の価値観を策定することも効果的です。

せっかく素晴らしい組織の価値観を作っても、それが意思決定や日々の行動で活用されないと残念ながらその効果はあまり大きくはないでしょう。次のパートでは、社員が組織の価値観に基づいて意思決定や日々の行動を行うようになるにはどうすればいいかについて書いてみます。

 

組織の価値観の浸透(ワーク例)

組織の価値観の浸透方法にはいろいろな手法がありますが、ここでは、私が行ったことについて書いてみたいと思います。

組織の価値観は「その組織が大切にすること」です。その組織が大切にすることと、個人が大切にすることをつなげるということを行いました。

個人の価値観が明確になっていない場合は、その個人がどんなことを大切にしているのかを自分で見つけるということを行いました。詳細は、こちらをご参照ください。

個人の価値観が明確になった後に、組織の価値観の理解を深めました。その際に、作成者が組織の価値観のそれぞれの言葉にどんな想いや意味を込めているのかを説明しました。価値観自体は目に見えないものなので、その価値観に決まった要因となった創業者のエピソードや転換点でのエピソード、その組織らしさを表すエピソードも合わせて議論をするとより組織の価値観の理解が深まりました。

その上で、個人の価値観と組織の価値観を結びつけていきました。自分の価値観が組織の価値観とどのように一致するかを理解し、その共通点を見つけていきました。このプロセスを支援するために、4-5人の小グループで自分の考えを共有し合い、他の人の経験や視点を聞くことで、つながりを深めていきました。

この後がより重要で、上長が定期的にメンバーと個別に会話し、日々の行動と組織の価値観を結びつけました。この実践を実現するには、上司自身がそのような対話を行うだけでなく、上司の上司も同様のアプローチを取り、最終的には組織のトップが直属のメンバーと組織の価値観に関する対話を日常的に行いました。つまり、リーダーシップの示し方が非常に重要でした。組織のトップが、直属のメンバーと定期的に組織の価値観の話をすることに加えて、社員とのタッチポイントにおいても、組織の価値観の話をしました。

それをサポートするために、HRの仕組みに組織の価値観の要素を組み込む必要があります。例えば、パフォーマンスマネジメントの項目に組織の価値観の要素を入れると、定期的な1:1において話題にすることにつながったり、組織の価値観にかなった行動をとって成果につなげた人を表彰することができるようになったりします。

HRの仕組みのサポートを活用しながら、組織のトップが自ら組織の価値観の日常化にコミットした言動をすることで、組織の価値観は実践されるようになっていきます。そして、いろいろなところで「その行動は、価値観の〇〇を体現している」というような会話がなされるようになってきたら、組織の価値観の浸透という面ではだいぶ良い状態になっていると考えられます。

そして、組織の価値観が暗黙知化されて、価値観の言葉を使わずとも普段の行動に表れるようになれば、上の図のValuesの部分は緑色で塗りつぶすことができます。

 

まとめ

以上、今回は「組織の価値観(Values)」について書いてみました。具体的には、以下について書きました。

  • 組織の価値観の定義や重要な理由
  • 組織の価値観の作り方
  • 組織の価値観の浸透の仕方

もちろん、上に書いたことがすべてではないので、参考にしていただきつつ皆さんなりのやり方を見つけていただければと思います。

そして、重要なことは、組織の価値観が暗黙知化されて、意思決定や日々の行動で自然と発揮されるように、必要なアクションを都度計画して実行することです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。少しでも皆様のお役に立てば幸いです。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織との関連はございません。

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