評価者トレーニングの重要性と実践法

G.パフォーマンスマネジメント

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今回は、評価者トレーニングについて書いてみたいと思います。皆さんは評価者トレーニングをどのようにされているでしょうか。また、どのようにお感じでしょうか。「どのように評価をすればよいのか明確になった」、「具体的にはよくわからなかった」、「そもそも評価者トレーニングは効果が薄い」など、様々なコメントがあると思います。

今後のパートで、評価者トレーニングの目的を具体的に書いた後に、私が実際にどのように評価者トレーニングを行ってきたかについて議論していきたいと思います。

 

評価者トレーニングの目的

私は、評価者トレーニングの目的を、「評価者が正しい評価を行えるようにする」ことだと考えます。ここでいう「正しい評価」とはどういうことでしょうか。それをより具体的に理解するためにも、評価エラーについて確認したいと思います。評価エラーには、ハロー効果や比較効果、寛大化傾向、中心化傾向、厳格化傾向などが挙げられます。他にもあると思いますので、ご興味のある方は調べてみていただければと思います。ここではそれぞれの詳細について説明するのではなく、「正しい評価」をより具体的に理解するという観点で書いていきます。私は、評価エラーを大きく2つに分類できると考えます。一つは、ハロー効果や比較効果などの評価者の印象によって起きてしまう評価エラーです。もう一つは、寛大化・中心化・厳格化傾向などの評価者の甘辛の傾向によって起きてしまうエラーです。つまり、「正しい評価」とは、評価者の印象や甘辛の傾向によらない評価と考えることもできます。

評価者の印象によらない評価をするためには、エビデンスに基づいて評価することが重要です。その組織が持っている評価基準と評価者が観察・収集したエビデンスを見比べて評価をしていくことで、印象による評価エラーを防ぎやすくすることができます。

評価者の甘辛の傾向によらない評価をするためには、評価者が自分の傾向を理解することが重要です。同じエビデンスと同じ評価基準に基づいて評価をした際に、自分は甘めの評価をする傾向があるのか、それとも辛めの評価をする傾向があるのかを把握します。その傾向は、他の評価者と議論をすることで気づくことができます。その議論を通して、自分の傾向を修正していくことができます。

 

実際に行ってきた評価者トレーニング

では、私が今までどのように評価者トレーニングを行ってきたのかについて書いていきます。評価の目的やエビデンスに基づく評価の仕方について一通り説明した後に、実際に体感してもらいます。その際の最初の質問は、「目標を110%上回る結果を出しました」という一文です。まずは、この一文に基づいて評価をすると、どういった評価(レイティング)をつけるかについて考えてもらいます。仮にレイティングを、「期待をこえる」「期待通り」「期待を下回る」という3段階と設定します(このレイティングはその組織で設定しているレイティングを使用します)。「目標を110%上回ったのだから、『期待をこえる』になる」、「これだけでは判断できない」などいろいろなコメントが想定されます。

「この情報だけではレイティングをつけることはできない」というようなコメントが出てきたら、次の質問に移ります。「では、どういう情報があれば、あなたは自信をもってレイティングをつけることができますか?」という質問をして、参加者に考えてもらいます。マーケットの情報、目標の内容、110%達成の自力の程度、上長のサポートの程度、他の社員の達成状況など、こちらもいろいろな視点が出てくるでしょう。

次の質問に移ります。「では、それぞれの情報がどのような水準であれば、『期待通り』のレイティングになりますか?」という質問について考えてもらいます。マーケットの伸び率は110%、上長のサポートは適度でほぼ自力で遂行した、他の社員の達成状況も110%など、いろいろな水準がでてくるでしょう。その際に、それぞれの項目で違いが出た場合には、それについて議論します。あるグループは「マーケットの伸び率は関係ない」という発言をしたとします。一方で他のグループは「マーケットの伸び率は110%が前提」のような発言をしたとします。その際には、それぞれのグループがなぜそのような発言に至ったのかについて確認をしたうえで、議論をします。ある程度参加者間でコンセンサスがとれたら、次の質問に移ります。

次の質問は、「では、『期待をこえる』レイティングをつけるためには、どこがどのようになる必要があるでしょうか?」というものです。これも参加者で考えてもらい、議論をしていきます。

このような議論を通じて、参加者は、「正しい評価」をするためには、どのようなエビデンスに基づく必要があるのかをより具体的に把握することができます。また、お互いの意見を共有することで、自分の評価傾向に気付き、他の参加者との議論を通じてすり合わせをすることができます。

更にここまでの議論を行った後に、「では、本来はどのような目標を設定しておくべきだったでしょうか?」ということについて考えてもらいます。「正しい評価」をするために把握する必要のある情報やエビデンスを具体的に理解すると、その理解に基づいて適切な目標を設定することにつながっていきます。また、「正しい評価」をするためには、目標設定を適切に行うことが重要であるという気づきにもつながっていきます。

最後の質問は、「適切な目標が設定されて、『期待通り』や『期待をこえる』というレイティングがつけられるようにするために、ラインマネージャーであるあなたはどのようなことができるでしょうか?」というものです。ほとんどのラインマネージャーは、自分のチームメンバーのレイティングで積極的に『期待を下回る』をつけたいとは思わないのではないでしょうか。この議論を通じて、上長である自分のサポートの重要性に気付いたり、一方で過度にサポートすることの弊害などについて議論が深まっていったりするでしょう。

この評価者トレーニングを実施した後、実際に評価をつけるタイミングで、関係者でカリブレーションを行います。ここでは、実際のエビデンスに基づいて議論をしていくことで、評価者の目線をすり合わせていきます。このカリブレーションを数回実践することで、評価者は自分の印象や甘辛に基づく評価からエビデンスベースで目線のあった評価ができるようになっていくでしょう。

 

まとめ

今回は、評価者トレーニングのポイントについて書いてみました。具体的には、評価者トレーニングの目的や私が実際に評価者トレーニングをどのように行ってきたかについて書きました。

最後までお読みいただきありがとうございます。今回の記事が、少しでも多くの人々の参考になれば幸いです。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。

皆さんは、評価者トレーニングをどのように行っていますか?

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