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以前の記事で、面接のスキルについて議論しています。私の面接のスキルの考え方や、4つのスキルのうちの「評価基準を理解する」と「エビデンスを集める」の2つについて書きました。
今回は、面接の4つのスキルの続きについて書いてみたいと思います。
エビデンスと基準を照らし合わせて適切な評価をつける
3つ目のスキルは、「エビデンスと基準を照らし合わせて適切な評価をつける」です。ここまでで評価基準を理解し、エビデンスを集めています。3つ目のスキルを活用して、収集したエビデンスがどの評価基準の記述に当てはまるかを判断し、評価スケールを決定します。
面接で収集したエビデンスをメモした内容を見直し、メモしきれていなかったエビデンスも書きだします。その上で、メモした内容を振り返ります。メモの内容がどの評価基準の内容に相当するかを考えます。
ここで大切なことは、メモした内容と評価基準の内容とを照らし合わせるということです。メモした内容を振り返ると、強く記憶に残っているものと、すでに記憶に残っていなかったものなどがあることに気付くこともあるかと思います。数十分程度の面接の時間ではありますが、印象に残っていることと残っていないことがあります。ここが重要なポイントで、自分の印象と評価基準を照らし合わせて評価結果を決めてしまうと、重要なエビデンスが洩れてしまう可能性があります。その結果、適切な評価をつけることができず、場合によっては適切な人材を逃したりや入社後にいろいろな事態に対応しなければならなくなったりする可能性もあります。
印象に基づいて評価をすることで、適切な評価にならないことが考えられます。例えば、一部の印象が強いがあまりにその印象が全体の印象に影響を与えてしまったり、他の候補者や自分自身との無意識な比較が評価に影響を与えてしまったり、といったことなどが一般的に考えられます。
これらは、自分の抱いた印象ではなく、収集したエビデンスと評価基準を照らし合わせて評価をすることで防げることが多いです。
印象に基づく評価によって適切な評価につながらないことは、エビデンスに基づいて評価をすることで大方適正化することができます。一方で、エビデンスと評価基準によって評価をしても、適正な評価につながらない場合もあります。それは、評価をする人の傾向によって偏った評価になり得るということです。
それを実感いただくために、ちょっとしたゲームをしてみましょう。複数の人で行っていただくと、より実感いただけると思います。
では、誰とも相談せず、今から質問することをご自身でフリーハンドで書いてみてください。
「直径17cmの円を書いてください。」
自分で円を書き終わったら、他の人と見比べてください。一人で行った方は、直径を測ってみてください。いかがだったでしょうか?
おそらく、それぞれの人が書いた円の大きさは様々だったのではないでしょうか。私の経験上では、全く同じ大きさになることの方が少なかったです。というよりも全く同じ大きさになることはほぼなかったです。また、直径が17cmぴったりになっていることもほぼなかったです。直径17cmという明確な数字があったにも関わらず、です。
つまり、客観的かつ具体的な評価基準があったとしても、収集したエビデンスがどの評価基準に当てはまるかの判断は、人によって異なる可能性があるということです。同じエビデンスや評価基準を見ても人によって判断が異なることが起こり得ます。
そこで、複数人でカリブレーションを行う必要があります。同じ候補者を数名で面接を行います。実務的に、面接官同士と候補者の日程を合わせることが難しいこともあるでしょう。その場合は、違う日時で別々に行うことも可能です。また、同じ面接の場に多くの面接官がいる場合は、話しにくく感じる候補者もいるため、同席する面接官の人数も配慮します。面接後に面接をした人で集まり、カリブレーションを行います。カリブレーションでは、それぞれの面接官が、自分がどんなエビデンスを収集したのか、そのエビデンスが評価基準のどの記述に相当すると判断したのかなどについて共有し、議論をします。その議論を通じて判断・解釈を標準化していきます。
アトラクトする
4つ目のスキルは、「アトラクトする」です。面接のスキルの主要な部分は、自組織で活躍できる可能性のある人材を見極めることですが、昨今の状況を考えると、その人材に自組織を選んでもらう必要があります。また、その候補者とはご縁がなかったとしても、その候補者の周りの人には自組織で活躍してハッピーになれる人がいる可能性もあります。更に、業界によっては、その候補者が顧客になる可能性もあります。そのために、「アトラクトする」スキルが必要になります。
面接において、候補者をアトラクトするには、どんなことが必要でしょうか。自組織外の人が自組織について得られる情報は、一昔前に比べると格段に増えていると思いますが、それでも限られていることの方が多いでしょう。そのような状況で、候補者がその組織について理解を深めるには、面接官から得る情報が貴重になります。その情報は、面接官が話す内容に加えて、表情やしぐさなどのノンバーバルからの情報も含まれます。
面接官と候補者は、多くの場合、面接の場で初めて会います。どうすれば、候補者によい第一印象をもってもらえるでしょうか。
第一印象でよく言われることは、笑顔です。特に、面接に臨む候補者は緊張しがちです。その緊張している候補者に対して、「たくさんの会社がある中で、自社を選んでいただき、また、お忙しい中、わざわざ面接のために時間を割いていただきありがとうございます。」という感謝の念をもって笑顔でお出迎えをします。
そして、緊張を和らげるためにちょっとした配慮をします。ここはカルチャーによるところも多いかと思いますが、一見緊張していなさそうな表情をしていても、実際に「緊張しています?」と確認してみると、「緊張しています」と答えた候補者が多かったです。そこで、「こういう場ですから、緊張しますよね」と共感を示すことで、候補者が笑顔になったり、場が和らいだりしました。一方で、カルチャーによって異なることがあると思いますが、緊張していることを表現するのがふさわしくない場合は、天気の話やちょっとした世間話などを通じて、話しやすい雰囲気を作っていきます。
また、「自組織で活躍できるかどうかを見極める」という意識を強く持ちすぎると、目つきが厳しくなったり、問い詰められているように感じられることがあったりしがちです。このようなことは、候補者がマイナスの感情を抱く可能性があります。そうすると、候補者が話したい内容を話せなくなり、結果として必要なエビデンスを収集しにくくなったりもします。また、その候補者をアトラクトする観点でもプラスに作用することは難しいでしょう。そこで、笑顔をキープすることを意識します。事前に、笑顔になると、顔のどのあたりに力が入り、どのあたりは力が抜けているのかを理解します。面接の間は、力を入れるところに意識的に力を入れ、力が抜けるところに意識的に力を抜くようにして、笑顔をキープするように努めます。
候補者が話しやすい雰囲気をつくり、エビデンスを収集していく中で、候補者のキャリアビジョンや求めていることを明確にしていきます。それらの理解に基づいて、自組織で働くことによって、それらが実現できたり、その実現に近づけたりすることを具体的に説明し、候補者が実感できるようにします。候補者からの質問に答える際にも、候補者の質問の意図を明確にして、その意図に真摯に答えるようにします。
面接の最後に、「数ある企業の中から自社に興味を持っていただき、そして、今まで時間を割いていろいろなお話をしていただき、ありがとうございます。」という感謝とお礼の気持ちを込めて挨拶をして、笑顔でお見送りをします。必要があれば、ネクストステップの話もします。
まとめ
今回は、面接のスキルについて述べました。その中でも、「エビデンスと基準を照らし合わせて適切な評価をつける」「アトラクトする」について書いてみました。ご覧いただきありがとうございます。今回のポイントが皆様の業務に役立つことを願っています。
なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、どのように面接をされていますか?
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