効果的なオンボーディングで新入社員の定着を促進

J.その他人事の仕組み

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今回は、オンボーディングについて書いてみたいと思います。皆さんの組織では、オンボーディングをどのように行っているでしょうか。「即戦力を採用しているので、そもそもオンボーディングは必要ない」、「オンボーディングでの情報が多すぎる」、「オンボーディングの時間があるのであれば、その時間を業務にあてた方がいい」、「オンボーディングで何をすればいいのか明確でない」などいろいろな意見があると思います。

以下では、私が考えるオンボーディングの目的を述べた後に、それぞれの具体的な内容について議論していきます。

 

オンボーディングの目的

私は、オンボーディングの目的は大きく2つあると考えています。一つは、「新入社員が、より早く立ち上がり求められる成果を出せるようにサポートすること」であり、もう一つは、「新入社員の早期退職を防ぐこと」です。それぞれの組織は、それぞれの目標やそのための戦略を持っています。目標や戦略が、全く同じという組織のほうが少ないのではないでしょうか。また、組織によっては、その組織が世の中に存在する理由やビジネスをする上で大切にすることを明確に定めているところもあるでしょう。明確に定めていなくても、その組織の人々の中に暗黙知として存在しているところもあるでしょう。戦略を実現するための組織構造もそれぞれの組織で特徴があるはずです。組織の人々が自分たちをどのように認識しているか、またある状況下で自然にとる行動にも、その組織特有の特徴が表れるはずです。

つまり、その新入社員がその組織で行う業務が、以前の組織で経験してきた業務と同様の内容だったとしても、その組織で成果を出すためには知る必要のある事であったり、身に着ける必要のある事があったりします。そこで、新入社員が入社した最初のタイミングで、その組織で成果を出しやすくするために必要なことを知ることが重要です。

また、新入社員がその組織に入社してくる際には、希望と不安が混在していることが予見できます。採用プロセスの中で、「この組織で働けば、自分が求めることが得られる」と実感して入社を決めた新入社員が、「この組織で頑張っていこう」と思う一方で、「自分はこの組織でやっていけるだろうか」という感情も持っている場合が多いのではないでしょうか。上で書いたように、特に入社して間もないころは、その組織のやり方に適応する必要があるため、今までの経験が活かしにくい状況でもあります。そのようなときに、「自分は期待に応えられないかもしれない」「この組織は思っていたのと違う」と感じて早期に見切りをつけて退職とならないようにすることも重要です。

双方の相性が良いけれども、早期の立ち上がりがうまくいかなかったり、短い期間での退職になってしまったりすると、ご本人にとっていいことではないことは言わずもがなでしょう。一方で、組織の観点でも、採用活動や育成に費やした時間やコスト(サンクコストも含めて)を回収することができずビジネスの観点でも良いことでないでしょう。オンボーディングは、新入社員が早期に立ち上がり成果として組織にリターンをもたらしてくれるための投資活動としてとらえられます。

 

より早い立ち上がりのサポート

では、新入社員が、より早く立ち上がり、その組織に貢献できるようにするためには、どのようなサポートが必要でしょうか。いくつかポイントがあると思いますので、それらを挙げていきたいと思います。

まず、その組織の方向性や大切にすることを理解します。先ほども述べましたが、それぞれの組織が目指す方向性やその組織が大切にすることは、それぞれの組織によって異なります。採用プロセスの中でもこの辺りの理解はされていると思いますが、入社したからこそ得られる情報も含めて、改めて組織の目指す方向性や大切にすることを明確にします。具体的には、その組織のパーパスやミッション、ビジョン、バリュー、戦略などになると思います。これらの書かれている文字を共有することに加えて、その背後にあるストーリーやその言葉に込められた想いなども含めて新入社員が理解できるようにします。これらについて、経営陣から直接話を聞いたり、議論できたりする機会を設けることもできるでしょう。

次のポイントは、パフォーマンスマネジメントや報酬制度などの人事の仕組みを理解します。新入社員が、自分に求められる成果がどのように決まり、どのようなことが評価されるのか、その評価はどのように決まってくるのかについて理解できるようにします。更に、自身の給与がどのような基準で評価されているかについて、理解を深められるようにします(制度や基準が開示されている範囲で)。組織で働く人であれば、その組織に貢献したいと考えていると思います。そこで、どういうことをすれば組織に貢献していると認識されるのかを明確にすることは重要です。その際に、業務上の結果に加えて、求められる言動も定めている組織であれば、その言動についても理解するようにします。求められる言動があるということ自体もその組織の特徴を理解することに役立ちます。報酬制度の理解も重要です。私の経験では、報酬に重きを置かない方もいらっしゃいますが、それでも長期的に見て報酬がまったく変わらないことに納得される方は少ないように感じます。金銭的報酬の仕組みを理解して、どのようにすれば給料が上がるのかを理解することは重要です。

3つ目のポイントは、業務をする上で必要なことを具体的に理解します。例えば、業務を遂行する上で使用するシステムがあれば、そのシステムの使い方を理解します。そのシステムのログインの仕方や入力の仕方などを具体的に理解します。また、その業務を遂行する上で、法律の知識が必要な場合には、その法律について理解できるようにします。他にもいろいろとあると思いますが、このポイントで重要なことは、実際に業務を遂行するようになったときに、どこに行けばそれについて知ることができるのかを明確にしておくことです。このあたりのことについて、オンボーディング中にすべて習得することは現実的に難しいと思います。ですので、オンボーディングが終了して実際の業務を行うようになったときに、その都度参考にできることが重要です。そのため、オンボーディング中は、中身を理解することに努めることに加えて、どこにその資料があるのか、その資料を見ても解消できない時はどこに問い合わせればいいのかを明確にしておくことも必要です。

 

早期退職を防ぐ

新入社員の早期退職を防ぐために、どのようなことができるでしょうか。大きなポイントとして、「自分の選択は間違っていなかった」と実感できることがあります。新入社員が組織に入ってくる際には、「この組織でやっていけるだろうか」といった不安を感じる場合があります。そこで、オンボーディング中にその不安を払拭する必要があります。

その観点で考えられる一つのポイントは、新入社員がウェルカム感を感じられるようにすることになります。「自分は歓迎されている」「期待されている」と感じられるようなコミュニケーションや内容が重要になります。そのために、オンボーディングでかかわる社員が、冒頭で「入社おめでとうございます」というような、入社を歓迎するメッセージを心を込めて発していきます。新入社員は、自分の業務の時間を奪う人ではなく、今後組織に貢献してくれる仲間という認識をもって実施することが重要です。オンボーディングの中で経営陣からのウェルカムメッセージを実施することも考えられるでしょうし、その新入社員の上長やチームメンバーが歓迎のためのイベントを実施することもできるでしょう。

2つ目のポイントは、この組織で自分の求めることが実現できると実感できるようにすることです。新入社員がその組織を選んだのには、明確な理由があります。その理由を明らかにして、それがこの組織で実現できることを実感してもらいます。より深く理解してもらうために、なぜその理由に至ったのかについて自ら気づけるようにしていきます。例えば、その新入社員のパーソナルバリューを明確にして、そのパーソナルバリューと組織を選んだ理由とをつなげいきます。更に、パーソナルバリューと理由、会社の方向性やバリューやその役割に求められることをつなげていくこともできます。また、パーソナルバリューとキャリアビジョンをつなげたり、キャリアビジョンが明確でない場合には、パーソナルバリューからキャリアビジョンを創り出し、この組織ではそのキャリアビジョンに近づけると実感できるようにしたりすることもできます。その組織でのキャリアパスを理解したり、昇格の基準を理解したりすることもできます。

3つ目のポイントは、オンボーディングが終了して実際に業務を行うようになったら起こるであろう、感情の変化について事前に理解することです。実際に業務を行うようになったら、様々なことが起こることが想定されます。常にモチベーション高く前向きに日々業務に取り組めるわけではないでしょう。そこで、今後どのような感情の変化が起こり得るのかをオンボーディング中に理解して、事前に想定しておくことが重要です。事前に理解しておくことで、その事態に直面しても、そのメカニズムや留意すべきこと、意識して行動すべきことが想定できるので、更なるモチベーションダウンを防ぐことができます。具体的には、「ハネムーン期間」や「チェンジカーブ」などの考え方が参考になります。

 

まとめ

今回は、オンボーディングのポイントについて書いてみました。具体的には、オンボーディングの目的、より早い立ち上がりのサポートのポイント、早期退職を防ぐためのポイントについて書きました。

最後までお読みいただきありがとうございます。今回の記事が、少しでも多くの人々の参考になれば幸いです。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。

皆さんは、オンボーディングをどのように行っていますか?

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