このサイトは、ビジネスの成功に貢献したい人事のプロフェッショナルや、より効果的な組織運営を望むリーダーを対象としています。
今回は、私が組織を理解し、課題を特定していくために実践している手法についてご紹介します。
エンゲージメント調査の分析
組織がエンゲージメント調査(またはそれに類するもの)を実施している場合、その結果を把握します。
分析のポイントは、スコアの値と変化に注目します。スコアの値は各項目の評価を示し、変化は前回以前の調査との比較からトレンドを把握します。これは実践されている方も多いのではないでしょうか。
今では、AIによって課題とアクションが提案されるものもありますが、私はそれもファクトとして把握します。
各設問のスコアの値と変化に加えて、私が重視しているのは、フリーコメントです。私はどんなに多くてもフリーコメントを全部読んでいます。なぜならば、フリーコメントは、その人があえて時間を使ってその人の言葉で書いてくれているものなので、その人の想いが込められていると思っているからです。書かれている内容を把握するだけではなく、ポジティブな内容もネガティブな内容もそこに使われている単語やフレーズに注目しています。そうすると、私なりに組織の状況がよりリアルに想像でき、課題の想定をすることができます。
ステークホルダーとの1:1
組織内のステークホルダーと個別に会っています。初回は30分から1時間程度の時間を設けています。
この段階では、まず相手とのラポールを築くことを重視しています。そのために、相手のことを理解する一方で、私のことをできるだけオープンに話すことに努めています。ここでは、返報性の法則を意識しています。詳しくは是非調べていただければと思いますが、私なりに簡潔に言うと、「自分がとった行動に応じて同様の反応が返ってくる法則」といったところでしょうか。
もちろん最初に相手から自己紹介をするか私から自己紹介をするかを相手に確認しますが、差し支えなければ私から自己紹介をさせてもらうようにしています。ここで表面的な自己紹介ではなく、敢えて失敗談を面白おかしく話しています。人事の人間と初めて話すというシチュエーションだと、最初から砕けた話をすることは難しいのではないかと考えています(もちろんその組織のカルチャーによるとは思いますが)。実際相手から自己紹介を始めてもらった時は、表面的な通り一遍のものであったり、いかに自分がすごいかをアピールするような内容であったりすることが多いです。
もちろんそれも悪いというわけではないですが、私としては、組織の課題を気軽に相談できる相手という関係を早期に築きたいと考えているので、もう少し距離感を縮めたいと思っています。そのために私自身の失敗談などもオープンに話して私の人となりを理解してもらうようにしています。そうすると、私の経験上では、相手もご自身のことをよりオープンに話していただけることが多いです。
そのような状況を作れたら、今度は理解することに集中します。その方が考える理想的な組織や今の組織・会社の良いところ・好きなところ・課題、そしてHRに対する期待について質問して理解するようにしています。ここで留意していることは、内容が真実であるかどうかや正しいかどうかということではなく、あくまでもその人の意見として話してもらうようにしています。そうすることで「間違ったことを言ってはいけない」と身構えてしまうことを防ぎ、より率直に話しやすくなるようにしています。意見を理解した後に、そのような意見を持つようになったきっかけや出来事も聞くようにして理解を深めています。
その中で、その方が仕事をするうえで大切にしていることも理解するようにしています。より良好な関係を築くことにも役立ちますし、この後の提案内容をより納得感のあるものにすることができるようになります。
最後にその方との1:1の頻度について確認します。頻度としては、週1回、隔週1回、月1回のどれかになると思います。この段階では相手のご要望を尊重しています。その方に特にこだわりがなければ、ビジネスサクセスの観点から必要な頻度を私から提案しています。
私自身がマネジメントをするHRチームも重要なステークホルダーであり、全員と1:1ミーティングを行います。お互いの理解を深めラポールを築くことが最重要であることに変わりはないので、上に書いたことと同じことを行っています。加えて、HRメンバーには、仕事をするうえで大切にしていることやキャリアビジョンについて理解を深めるようにしています。これらが理解できると、チームのマネジメントに非常に役立ちます。
HRメンバーにも、人事チームの良いところ・課題に加えて、会社の良いところ・課題について、彼らの意見を聞きます。そして、ラインマネージャーとしての私に聞きたいことや知っておいてほしいことも聞いています。
人事の仕組みの分析
組織の人事制度やプロセスを詳細に分析します。その際に、私は下の図を使ってそれぞれの理解を深めていきます。詳しくは別の回に書いていきたいと思います。

以上のことを同時並行で早急に行い、就任1か月目には情報収集と問題の把握、2か月目には課題の構造化、3か月目には提案と実行計画の策定という流れを目指しています。
今回は、私の組織分析の手法についてご紹介しました。ただし、これが唯一の正解ではありません。私の経験を元に情報を共有することで、皆様の業務にお役立ていただければ幸いです。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織との関連はございません。
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