組織の存在意義(パーパスやミッション)が社員の共感を生む理由

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このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。

今回は、存在意義について書きます。

 

組織の存在意義(パーパスやミッション)とは?

存在意義とは、「その組織がなぜ世の中に存在しているのか」を表すものです。私は、「その組織が究極的に達成したいゴール」のようにとらえています。パーパスやミッションという言葉が使われることが多いと思います。

 

なぜ存在意義?

なぜその組織にとっての存在意義をつくる必要があるのでしょうか。私は、これによってほぼその組織の在り方が決まってしまうほど重要なものだと考えています。その他のHRの仕組みの方向性を決定づける出発点だと認識しています。意思決定をする必要がある際には、この存在意義が重要なよりどころになります。意思決定の重要さや大小にかかわらず、日常のおける意思決定においても、この存在意義はその意思決定の大きな根拠になります。

 

ですので、この存在意義は、働く先を決めるうえで重要な要素の一つになっている人もいるのではないでしょうか。その組織の採用選考に入るかどうかを決める最初のポイントにもなり得るでしょう。その存在意義に共感できること、そして是非それを実現したいと本気で思えるかが大切になります。

 

存在意義の確認

採用選考の過程や入社後に、その存在意義が社員にどのように認識されているかを確認しています。方法としては、エンゲージメントサーベイなどのサーベイの項目に入っている場合は、関連する設問のスコア(値と以前からの変化)とそれに関連するフリーコメントで書かれている内容を調べたり、実際に社員と会って話を聞いてみたり、社員間で日常使われている言葉にアンテナを立てたりしています。

重要なポイントとしては、社員がその存在意義を理解しているだけでなく、共感を示し、その実現にワクワクしている状態になっているかどうかです。そういう状態になっていると確認できれば、存在意義の項目については、「意図通りに機能している」という判断をし、下の図の「Reason to Exist」のところを緑色で塗りつぶします。

そもそも認識されていない、または、認識はされているが共感やワクワクの状態までにはなっていないというふうに確認できた場合には、「もっとよくできる」という判断をし、黄色で塗りつぶします。

その存在意義が社員のやる気をそいだり、社員から存在意義について否定的なコメントがあったりする場合には、「ネガティブなインパクトを与えている」という判断をし、赤色で塗りつぶします。存在意義自体が存在しない場合もここに当たるでしょう。

塗りつぶす色には特にこだわりはありませんが、より多くの人にとってパッと見てイメージがつきやすいようにという観点からそれぞれ緑、黄、赤を使っています。

 

存在意義への共感やワクワクのために

ビジネスサイドの方々と議論をして、この「存在意義」が黄色や赤だと同意された場合のネクストステップとして、私がどのようなことをしているのかについて書きたいと思います。

黄色の場合は、その存在意義の認知を高めることに加えて、その存在意義と社員一人一人をつなげることを行います。「会社の存在意義」から「私の存在意義」、さらには「私たちの存在意義」になるように目指します。そのために、創業者の想いや現経営陣の想い、一人一人の価値観が重要になってきます。

 

創業者の想い

ほぼどの企業も最初は創業者や創業メンバーによって生まれていると言えると思います。その創業者や創業メンバーは、他の企業に勤めるという選択をするのではなく、敢えてリスクをとって創業するという選択を選びました。そこには並々ならぬ決意やパッション、夢があったことと思います。つまり、創業当時のその企業は、創業者や創業メンバーのそういった想いが体現されたものになっているはずです。その体現したことが顧客に受け入れられ、選ばれることで現在に至っていると思います。

そういう意味で、企業の存在意義を表す言葉には、創業者や創業メンバーの想いが反映されてしかるべきです。創業者や創業メンバーがなぜリスクをとってまで起業をしたのかを理解することで、存在意義として書かれた言葉に創業者・創業メンバーの想いを宿すということです。

歴史の長い企業だと、その歴史の中で「中興の祖」と呼ばれる方がいらっしゃることもあると思います。そういった「中興の祖」がいらっしゃれば、その方の想いを存在意義に宿すことも有意義かと思います。

 

現経営陣の想い

創業者・創業メンバーの想いを理解したうえで、現在の変化に富むビジネス環境においてその創業者・創業メンバーの想いをアップデートする必要があります。それに適任なのが、現在のマネジメントメンバーです。創業者・創業メンバーの想いを現在のビジネス環境に適応し、かつ、ご自身の想いを付け加えて、社員に語っていくことが重要です。

語る頻度や場としては、私のおすすめは社員とのすべてのタッチポイントにおいて常にその話をすることです。社内報やビジネス結果の共有時、表彰式、新年度のあいさつなど、社員とかかわるすべての場で存在意義の話から始めることをお勧めしています。「今の環境で創業者・創業メンバーだったらどうするか?」のようなテーマでマネジメントメンバーと社員とで語り合ってもいいですね。

 

一人一人の価値観

創業者の想いやマネジメントメンバーの想いを存在意義に宿して、すべての社員とのタッチポイントで語れば、必ず社員の共感やワクワクにつながるというわけではありません。どんなに存在意義を表す言葉に創業者・創業メンバーの想いやマネジメントメンバーの想いが入ったとしても、それだけでは一人一人の社員にとっては「会社の存在意義」のままである場合が多いです。それを「私の存在意義」にする可能性を高めるためには、一人一人が自分の価値観を把握することが重要です。

私は、価値観とは、その人の価値基準を決めることであり、その人にとって良いことと悪いこと、好きなことと嫌いなこと、楽しいことと楽しくないことなどを決める判断基準であると理解しています。ですので、その人が自分の価値観を理解し、その価値観と創業者・創業メンバーやマネジメントメンバーの想いがこもった存在意義の言葉とをつなげることで、「私の存在意義」になりやすくなります。

 

個々人の価値観を把握する方法

では、個々人の価値観はどうやったら明確になるのでしょうか。一般的にはいろいろな方法があると思いますので、是非皆さんで調べてご自身にしっくりくるやり方を見つけていただければと思います。ちなみに、私がどのように行っているかを書きたいと思います。

私は、自分の価値観は今まで生きてきて経験したことによって形成されていると考えます。なので、その人の価値観を「明確にする」というよりは、「見つける」というほうがより実態に近いかなと思います。具体的には、その人の楽しかった思い出を話してもらっています。その話を聞きながら、あたかも自分がその場面にその人と同じように存在しているとイメージできるように質問をしていきます。例えば、その話はいつ頃の話だったか?場所はどこだったか?そこには誰がいたか?何をしていたか?具体的にどのようなことをしていたか?などを質問することで、その方の頭にイメージされている場面と同じ場面を見るようにしています。そうすると、その人の感情まで想像できるようになってきます。最後に、ここまで話してみて気づいたことを質問します。

一人が話し、複数の人が質問することで話し手の価値観を見つける作業をみんなで行うことができます。その後に、話し手が話してみて見つけたことと、聞き手が見つけたことを共有することでより理解と確信が深まります。

このワークのその他の良い点として、ワークを行った後には、それぞれの人たちの関係性がより良く築かれ、距離感が縮まるということもあります。

こうして見つけた個人の価値観と、創業者・創業メンバーやマネジメントメンバーの想いがこもった存在意義の言葉をつなげることで、その個人にとっても意味のある存在意義になっていくという経験を、私は複数の会社やグループでしたことがあります。

赤の場合も、基本的には黄色の場合と行うことは同じです。存在意義が存在していない、または、変えたいという場合は、創業者・創業メンバーの想いや現在のマネジメントメンバーの想い、そして社員一人一人の価値観を議論のテーブルにあげて、皆で話し合っていくのがよいと思います。どのように話し合っていくかは、組織の規模にもよるとは思いますが、ポイントは、社員一人一人が、創業者・創業メンバーやマネジメントメンバーの想いも表現されて、自分の価値観もその中に入っていると感じられるような存在意義をつくっていくことです。

個人の価値観を特定することは、他のHRの仕組みにも役立つことが多いです。私は、個人の価値観を特定して他のHRの仕組みとつなげるということを約10年行っていてその効果を実感しているのですが、最近個人の価値観に関するトピックをよく聞くようになってきたのはうれしい限りです。

 

まとめ

以上、今回は「存在意義」について書いてみました。具体的には、以下のことについて書きました。

  • 存在意義の定義や存在意義が重要な理由
  • 組織における存在意義に関する状況の把握の仕方
  • 社員が存在意義に共感する方法

社員が存在意義に共感して、「私の存在意義」や「私たちの存在意義」として認識できるようするためには、「創業者の想い」「現経営陣の想い」「個々人の価値観」をつなげていくことが重要であることを書き、その中で個々人の価値観の見つけ方についての私なりのやり方もお伝えしました。

ここまでお読みいただきありがとうございました。少しでも皆様のお役に立てば幸いです。なお、このニュースレターは私の個人的見解であり、所属組織との関連はございません。

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