戦略人事の重要性と各機能の役割

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今回は、戦略人事について書いてみたいと思います。戦略人事という言葉が使われるようになって久しいですが、皆さんは戦略人事についてどのような考えがあるでしょうか。「人事は戦略的にならなければならない」、「人事は戦略人事だけではない」、「戦略人事のためにHRビジネスパートナーがある」など、いろいろな考えがあると思います。

私は、人事は戦略的であると考えます。HRビジネスパートナーに加えて、他の人事機能も戦略的に考え行動することが重要です。そもそも戦略的とはどういうことでしょうか。生成AIで確認してみると、「目的を達成するために計画的で効率的な手段を用いることを指します。」と出てきました。ここでいう目的とは、究極的にはその組織の存在意義であり、それをより具体的に表現した長期目標や短期目標、それらをどうやって達成するかを定めた事業戦略などの観点で考えることが重要です。

今後のパートで、それぞれの機能についてより具体的に書いていきます。

戦略的HRビジネスパートナー

一つ目は、戦略的HRビジネスパートナーです。HRビジネスパートナーが戦略的であるということについては、多くの方がそう思われているのではないでしょうか。HRビジネスパートナーは、ビジネスリーダーのパートナーとして、そのビジネスの目標を達成するために、戦略的な観点で人事の側面からサポートすることが大きな役割でしょう。

HRビジネスパートナーは、その組織のパーパスやビジョン、バリュー、事業目標、事業戦略を理解したうえで、それらを実現するにはどういった組織や人材が必要かを考えます(以降では、パーパスやビジョン、バリュー、事業目標、事業戦略をまとめてPVVTSと表現します。TはTargets、SはStrategyを表します。)。その上で、あるべき組織や人材と現状とを分析して、そのギャップや、ギャップが生まれている課題を特定します。そして、その課題を解決するためのプランを作成してビジネスリーダーに提案し、彼らからのフィードバックをふまえて修正して合意を取り付けます。その後、その合意したプランの実施をリードして、特定した課題を解決することによってビジネスに貢献していきます。

 

戦略的採用

採用機能も戦略的であるべきです。採用機能における戦略性とは、その組織のPVVTSを理解したうえで、その組織で活躍が期待される人材像を明確にします。そして、その人物像に見合う人材を採用していきます。

その組織で活躍が期待される人物像を作成する際には、いくつか方法があるでしょう。例えば、PVVTSに大きく貢献していたり体現していたりするハイパフォーマーを特定して、そのハイパフォーマーを分析することで、組織にとって望ましい人物像を明確にする方法があります(もちろん、多様な背景や価値観を尊重し、活躍できる人材を広く含めて検討していくことが前提となります)。

また、PVVTSの観点から望ましい人物像を創造していくこともできます。

この人物像を作成していく際には、採用部門がリードをして人事内外の関係者からのフィードバックも得ながら提案を作成し、ビジネスリーダーと議論をして彼らからのフィードバックも考慮しながら最終化して合意していくことが重要です。つまり、採用部門だけで行うのではなく、ビジネスリーダーも巻き込んでその組織として活躍が期待される人物像を作り上げていくことが大切になります。

望ましい人物像が合意できたら、採用部門はその専門性を発揮して、その人物像を具体化していきます。その人物はどこにいて、どのような就職活動を行っているのか、どのようなポイントで就職先を決めるのか、それらに関する情報はどのような手段で入手しているのか、などを明確にしていきます。

その上で、その人物像に見合う人を惹きつけるためのメッセージを作成し、そのメッセージをどうやってその人々に届けるのかを考えていきます。もちろん、そのメッセージについても、ビジネスリーダーを含む関係者と議論をして最終化し、その組織としてのメッセージにしていきます。

更に、その組織で活躍が期待される人物を選考し、その人物に選ばれるための選考プロセスや選考の仕方を設計し、関係者がそのプロセスを設計の意図通りに実施できるようにサポートしていきます。

 

戦略的人事制度構築

人事制度を構築する際も戦略的であることが重要です。人事制度を構築する際には、PVVTSの理解に基づいて、ふさわしいカルチャーや言動を特定していきます。ここでカルチャーには行動の他にもアイデンティティも含まれます。

望ましいカルチャーや言動をドラフト・提案して、ビジネスリーダーのフィードバックを反映して最終化・合意していきます。そして、その合意したカルチャーや言動が促進されるように人事制度を構築していきます。

例えば、報酬制度については、望ましいカルチャーや言動を体現している人が金銭的にもより報われるような内容にしていきます。金銭的報酬だけでなく、トータルリワードの観点から制度設計する場合には、ふさわしいカルチャーや言動を体現した人が、金銭的にも非金銭的にもより報われるような制度を設計していきます。

評価の仕組みもこの観点で設計していきます。ビジネスリーダーと合意した望ましいカルチャーや言動を体現した人が、より高い評価を得られたり、昇格の機会に恵まれたりするように設計していきます。

 

戦略的トレーニング

トレーニングも戦略的であるべきです。PVVTSに基づいて、望ましい人物像を明確にしていきます。トレーニングの観点では、望ましい人物像のスキルやマインドセットの観点で具体化していきます。それらをビジネスリーダーと合意して、組織としての望ましいスキルやマインドセットとして最終化していきます。

その後、そのスキルやマインドセットが習得できるようにトレーニングを設計していきます。それぞれの役割に求められるスキルやマインドセットが習得できるようにメニューや中身を作成していきます。

ここで重要なポイントは、その組織のPVVTSに貢献できるという観点でのスキルやマインドセットを習得できるプログラムを作成するということです。例えば、管理職のスキルやマインドセットというと、すでに世の中にたくさんの管理職向けトレーニングがありますが、それをそのまま導入するのが良いのかどうかを検討することが重要です。その組織のPVVTSに貢献する管理職に必要なスキルやマインドセットの観点から、その管理職向けトレーニングを検討します。そのトレーニングでカバーできるところとできないところを明確にし、カバーできないところをどのようにしてカバーするのかを考えます。

長さの都合でここまでとしますが、それ以外の人事機能も戦略的観点を持つことは重要です。具体的には、その組織のPVVTSの理解に基づいて望ましい組織や人物像を明確にします。そして、あるべき組織や人物像を満たすように各人事機能で専門性を発揮して中身やプロセスを構築して運用していきます。もちろん、その組織や人物像は、それぞれの人事機能で一貫性や統一性があるように連携し、ビジネスリーダーとも合意してその組織とあるべき組織や人物像としていくことも重要です。

 

まとめ

今回は、戦略人事について書いてみました。具体的には、HRビジネスパートナーに加えて、他の人事機能も戦略的であることの重要性について書きました。ご覧いただきありがとうございます。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。

皆さんは、人事を戦略的にするために、どのようなことを行っていますか?

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