パフォーマンスマネジメントとサクッセッションプランニングの融合戦略

G.パフォーマンスマネジメント

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今回は、パフォーマンスマネジメントとサクセッサーマネジメントの融合について書いてみたいと思います。以前の記事で議論しましたが、私は、パフォーマンスマネジメントを「その年の目標を達成しやすくする仕組み」と考えています。一方、サクセッサーマネジメントを「中長期的にその組織のビジネスの成功を成し遂げ続けるために、タレントパイプラインを構築する仕組み」と考えています。私は、パフォーマンスマネジメントとサクセッサーマネジメントを別々に実施するのではなく、同じプロセスの中で実行する方が、より効果・効率が高いと考えています

次のパートでより詳細に書いていきますが、大きく分けて、「長期目標や戦略に基づく役割定義」、「サクセッサー候補の特定」、「ディベロップメントエリアの特定」、「ディベロップメントプランの作成」、「その年のターゲットの作成」、「継続的なレビューと開発」、「年度レビューとサクセッサー候補の再特定」という内容から成ります。

 

長期目標や戦略に基づく役割定義

まず行うことは、「長期目標や戦略に基づく役割定義」です。「長期目標」は、組織の「存在意義」に基づいて、時間軸と内容をより具体的にしたものです。ビジョンや中長期目標として掲げられることもあるでしょう。事業環境や組織にもよりますが、3-5年後の達成したい状態が描かれています。そして、その「長期目標」を実現するための「Where to play」と「How to win」を明確にしたものが「戦略」になります。つまり、「戦略」には、どの領域でビジネスを行うのか、そして、その領域でどのようにしてビジネスの成功を実現していくのかが定められています。

その「戦略」を実現するために、組織構造が作成され、それぞれのポジションに期待される役割が定義されます。どのポジションまで具体的に定義するのかは、その組織の考え方とリソースの豊富さによると思いますが、多くの場合、その組織のトップのポジションとそのポジションに直接レポートするポジションは考慮されるでしょう。更に、それ以外のポジションでも、その「戦略」を実現する上で不可欠なポジションも含まれることもあるでしょう。期待される役割の内容は、その役割に期待される成果や権限、その役割を担ううえで必要な知識やスキル、経験などが入ります。

 

サクセッサー候補の特定

次は、「サクセッサー候補の特定」です。その組織で定められた基準に従って、定義されたポジションへのサクセッサー候補を特定します。多くの組織で、パフォーマンスとポテンシャルの2軸を活用していると思います。私は、「サクセッサー候補の特定」において、パフォーマンスは前提条件だと考えています。つまり、今の役割で期待されている以上の成果を挙げていて初めて、次のポジションを考慮することができるということです。

ポテンシャルは、組織によって基準が異なると思います。私は、準備度合いで考えています。準備度合いとは、その特定されたキーとなる役割で期待される成果を出すためにどのくらい準備が整っているのかを表します。大きく分けて、視座・視野と知識・スキルがあります。

まず視座・視野について説明します。これは、そのキーとなる役割の立場や範囲で物事を見ているかどうかということです。例えば、キーとなる役割が、その組織のトップのポジションだとすると、その組織のトップの立場で物事をとらえて発言したり行動したりしている度合いになります。また、そのトップのポジションの責任範囲で物事をとらえて発言したり行動したりしている度合いになります。

具体例として、現在その組織で営業部門を管轄している人が、営業の観点で発言している場合は、現在担っているポジションの役割を果たしている一方で、その組織のトップの立場での発言ではないため、トップの役割の準備度合いは高くないとなります。一方で、トップの役割に求められることを考慮して営業以外の職種や他のステークホルダーの観点も踏まえて発言している場合、トップの役割の準備度合いは高いとなります。

視座・視野の観点で準備度合いが高い・低いということを判断するのは、カバーしている程度と頻度によります。先ほどの組織トップの役割の例でいうと、その営業部門を管轄している人の言動が、そのトップの役割で期待されている立場や範囲をカバーする割合が多ければ多いほど、また、そのトップの役割からの言動の頻度が多ければ多いほど、視座・視野の観点でのそのトップの役割への準備度合いは高いということができます。

知識・スキルについては、「長期目標や戦略に基づく役割定義」で定義された、そのポジションを担う上で必要な知識・スキルをどの程度習得し発揮しているかを表します。

もちろん、視座・視野と知識・スキルの両方とも準備度合いが高いことが望ましいですが、敢えて優先順位をつけるとすると、「サクセッサー候補の特定」の段階では、視座・視野のほうを優先して特定します。というのも、知識・スキルについては、この後のプロセスによってより効率的に高めることができるためです。

ここで重要なことは、既存の長期目標や戦略を実現する観点でのサクセッサー候補を特定することと、その長期目標や戦略をこえた観点でのサクセッサー候補を特定することを分けて考えるということです。既存の長期目標や戦略を実現する観点の場合は、組織としてのWhy、What、Where、Howが明確になっています。それに基づいてキーとなる役割も具体化されています。

一方で、既存の長期目標や戦略をこえた観点の場合は、それらがほぼ存在しない状態です。この場合は、新たに長期目標や戦略を作成する必要があります。特に、組織のトップが継続してその役割を担うのではなく、次の世代にバトンを渡すことを考えている場合にはより重要になります。例えば、現職の組織トップの役割を担っている人が、現在の5年計画を全うしたら次の世代に引き続くことを考えている場合には、現在の長期目標や戦略を前提とせず、5年後以降(短くても10年後)のビジネス環境を考慮して新たな長期目標や戦略を作成でき、組織のメンバーを率いることができる人を特定することが重要です。

 

ディベロップメントエリアの特定

次は、「ディベロップメントエリアの特定」です。「サクセッサー候補の特定」で特定された候補者それぞれが、その役割を担ううえで、伸ばすべきところを特定します。その際には、最初に定義した役割の内容が参考になります。その役割を担う上で求められる知識やスキル・経験と現状のその候補者のそれらとの間のギャップを特定します。例えば、先ほどの営業部門を統括している人の場合は、営業以外の職種の観点を習得するといったことが挙げられます。

現在の長期目標や戦略の次の世代の場合には、5年後以降のビジネス環境の理解を深めるといったことも考えられます。

全てのギャップを網羅的に把握することに加えて、優先順位を明確にしていきます。その際には、「そのギャップが埋まったら、よりその役割で成果を挙げやすくなる」という観点で優先順位をつけていきます。

 

ディベロップメントプランの作成

その次のステップは、「ディベロップメントプランの作成」です。どのようなことを行うと、ディベロップメントエリアが育成されてギャップが埋まるのかを考えます。その際に、必要な知識・スキルを理解するためのトレーニング、トレーニングで学んだことを実践するアサインメント、より短期間でより質高く習得するための他者からのフィードバックの3点を考慮します。

例えば、5年後以降のビジネス環境を踏まえた長期目標や戦略を作成できるようになるということを考えてみます。まず、トレーニングでは、5年後以降のビジネス環境の理解の仕方やそれに基づく長期目標や戦略の作成の仕方に関するトレーニングが必要になります。

アサインメントとして、次の長期目標や戦略を作成します。専任として業務を行うことも考えられますし、他の業務を担いながらこの業務を遂行することも考えられます。この辺りは組織の状況によるでしょう。

他者からフィードバックを得られるように、メンターやコーチを任命します。メンターとしては、次の長期目標や戦略を作成するアサインメントを遂行する上で直面することを気軽に相談できるような関係性になれて、かつ、その分野での知見が豊富な人がふさわしいです。コーチは、その候補者がこれらの知識・スキルを習得することに責任を持っています。通常は、上長が担うことが多いです。その候補者の必要性に応じて、教えたり、質問をしたり、モチベーションに配慮したりします。

 

その年のターゲットの作成

次のプロセスは、「その年のターゲットの作成」です。ここでサクセッサーマネジメントとパフォーマンスマネジメントが交わりますサクセッサーマネジメントの観点で作成されたディベロップメントプランに基づいて、アサインメントが決まります。プランによっては、今までの役割とは異なる役割がアサインされることもあります。そのアサインで成し遂げることをターゲットとして明確にします。例えば、先ほどの「次の長期目標や戦略を作成する」というケースの場合は、「〇月までに、〇年までの長期目標と戦略を作成し、キーとなるステークホルダーとアラインする」というターゲットが考えられます。もちろん、現在のグレードに求められる成果をターゲットとして明確に設定することも行います。

 

継続的なレビューと開発

その後は、「継続的なレビューと開発」です。ここでは、通常のパフォーマンスマネジメントと同様に、設定したターゲットを達成できるように継続的にレビューを行い、ターゲットを達成できるようにディベロップメントエリアを開発していきます。

ディベロップメントプランで設定したトレーニングを実際に受講します。受講した内容を活用してターゲットを達成していきます。また、ターゲットに取り組んでいる際に出てくる数々の問題に対して、自ら考えることに加えて、メンターに相談します。また、コーチと定期的に話し、習得状況を共有して、ディベロップメントエリアを育成して身に着けられるようにアクションを明確にしていきます。

 

年度レビューとサクセッサー候補の再特定

最後は、「年度レビューとサクセッサー候補の再特定」です。年度末にその年度を振り返り、ターゲットの達成状況とディベロップメントエリアの習得状況を確認します。年度を通じて、習得すべき知識・スキルや設定したターゲットの達成状況についてメンターやコーチと話し、その都度必要なアクションを明確にして実行することによって、年度末では、その知識・スキルが習得でき、ターゲットが達成されたことを確認できるのが理想です。

年度を振り返り、サクセッサー候補としての準備度合いが高まり、より強力な候補として再特定されると、その役割を担う上での他のディベロップメントエリアを特定する、というより高次元でのループが回るようになります。そして、その役割の準備度合いが十分になったら、実際にその役割を担っていくことになります。

 

まとめ

今回は、パフォーマンスマネジメントとサクセッサーマネジメントの融合について述べました。ご覧いただきありがとうございます。これらはあくまで私自身の経験と考えに基づくものですが、多くの方々にとっても有益なヒントとなることを願っています。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。

皆さんは、パフォーマンスマネジメントとサクセッサーマネジメントをどのように行っていますか?

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