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今回は、変化について書いてみたいと思います。「今は変化が激しい時代」、「そもそも人は変化を好まない」、「変化は起きてしまうものなので、変化に適応することが大切だ」等々、変化についていろいろな記述がありますが、皆さんは、変化をどのようにとらえて、どのように対応していますか?この記事では、変化のとらえ方を比較と学びの2つの観点で考えてみます。次のパートで詳細を議論していきます。
変化をどう捉えるか?— 比較の視点
1点目は、変化を比較の観点で考えます。つまり、変化前の状態と変化後の状態を比較してとらえるということです。組織を例にとると、ビジネス環境が変化することで組織の長期目標や事業戦略が変化します。それに伴って各種戦略も変わり、商品や販売の仕方なども変わります。また、人事の仕組みも変わります。それぞれの変化を変化する前と変化した後の状態を比較して違いを理解します。
例えば、「日常をより豊かにする」という組織の存在意義は変わらなくても、ビジネス環境が変わることで、長期目標が「よりラグジュアリーな体験をつくる」というものから、「よりコンタクトしやすくする」というものに変わったとします。それに伴い、事業戦略も変わり、商品や販売チャネル、販売の仕方なども変わってくるでしょう。また、それらをサポートするために人事の仕組みも変わります。それらを通じて、カルチャーも変わります。つまり、組織外の人々の自組織のとらえ方も変わります。組織内の人々の自組織のとらえ方や言動も変わっていきます。
ここで重要なことは、変化前と変化後を比較でとらえる場合は、変化前と変化後で何がどのように違うのかをとらえて、どこをどのように変えていく必要があるのかを明確にし、変化後に求められる言動を習得できるようにしていくということです。そのために、「なぜ変化する必要があるのか?」「何を変えるのか?」「具体的にどのように変えるのか?」といった、Why、What、Howを明確に理解していきます。
一方で、留意すべき点としては、変化前のパラダイムに基づいて変化後をみないということです。変化前のパラダイムを前提として変化後をみると、変化前の価値観や基準が強く影響する場合もあるでしょう。
例えば、先ほどの組織の変化の例で考えると、「よりラグジュアリーな体験をつくる」という長期目標を実現するために設計されたもろもろのことによって築かれたパラダイムを前提として、「よりコンタクトしやすくする」という変化後に設計されたもろもろのものを見ないということです。もし、変化前のパラダイムに基づいて変化後を見てしまうと、「よりラグジュアリーな体験をつくる」を実現するために設計されて築き上げられたパラダイムを基準として、「よりコンタクトしやすくする」を実現するために行われる新しい施策の意図を正確に理解することが難しくなる場合があります。
より具体的に書くと、「よりラグジュアリーな体験をつくる」ために、販売チャネルは限定されて、そこでの販売方法もよりラグジュアリーな体験を意識したものとなっていたとします。これに対して、「よりコンタクトしやすくする」を実現するために、今までは考えられなかった販売チャネルを開拓する必要も出てくるでしょう。また、販売の仕方もラグジュアリーからコンタクトのしやすさが重視されていくでしょう。その際に、変化前のパラダイムで前提としていた限定された販売チャネルやラグジュアリーな購買体験に基づいて、変化後の世界観を実現するために新たに開拓される販売チャネルや購買体験を評価してしまうと、これまでのブランドのイメージとは異なるものと考え、違和感を持つ場合もあります。
別の例として、個人が転職をするケースを取り上げましょう。転職する前の職場での経験を基準に、転職後の職場を比較すると、戸惑いや違和感を得る場合もあるかもしれません。転職後、前職との違いに気づき、「前職ではこうだったのに、なぜこちらでは違うのか」と感じることもあるかもしれません。転職後間もないころは、いわゆる「ハネムーン期間」と言われる期間で物事を好意的にとらえやすい傾向があります。一方で、時間が経つと前職との違いに気づくことも多くなるため、それをどう受け止めるかが適応のポイントになります。比較の仕方によって、場合によってはモチベーションやパフォーマンスに影響が出ることもあるので注意が必要です。
変化をどう捉えるか?— 学びの視点
2点目は、変化を学びの観点で考えます。つまり、変化後の状態や見聞きすること、経験することをすべて学びととらえるということです。先ほどの組織の例でいうと、「よりコンタクトしやすくする」という長期目標を実現するために事業戦略はこうなり、商品開発はこのようになり、こういった販売チャネルでこのように販売していくということを理解し、そこで起こることをすべて学びととらえて、その学びを次にいかしていきます。人事の仕組みはこのようになり、こういった言動が評価されるといった理解に基づいてそれにふさわしい行動をとるようにします。そして、その行動をとったことで起きたことも学びととらえ、更により良くなるために活用していきます。このような捉え方をすると、変化を比較の観点でとらえている場合の言動も学びとなります。
また、転職の例を考えると、転職後の職場で経験することが学びになります。転職後の職場の存在意義や長期目標、戦略やそのための組織構造、それぞれの人事の仕組みについて、内容を理解することに加えて、それぞれのつながりも理解します。人々の言動についても、「こういう時はこのような発言をするのか」という学びを得ます。「なぜこういう時はそういう発言をするのだろうか」といった、理解を深めるための「なぜ」を問い、学びを深めていきます。そのようにして今の理解を深めていくことで、「こういう時はこのような言動をすればいい」といった学びを得ていきます。
まとめ
今回は、変化をどのように捉えて、どのように対応していくかということについて述べました。変化を比較でとらえる観点と学びでとらえる観点について取り上げました。
変化を比較の観点でとらえる場合には、変化前のパラダイムに基づいて変化後を評価することの留意点についても触れました。最後までお読みいただきありがとうございます。変化への向き合い方は、人それぞれに異なるものですが、この記事が新たな視点を提供し、日々の変化をより前向きに捉えるヒントとなれば幸いです。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、変化をどのように捉えて、どのように対応されていますか?
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