このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。
今回は、ビジネスリーダーがメンバーのキャリア開発を行うことについて書いてみたいと思います。ビジネスリーダーがメンバーのキャリア開発を行うということを関して、「時間をさけない」、「自分の専門領域と違うことはアドバイスできない」、「そもそもメンバーのキャリア開発をビジネスリーダーが行う必要があるのか」等の声を聞きます。以降のパートで、なぜビジネスリーダーがメンバーのキャリア開発を行う必要があるのかということとその具体的な方法について議論していきます。
なぜビジネスリーダーがメンバーのキャリア開発を行う必要性があるのか?
そもそもなぜビジネスリーダーがメンバーのキャリア開発を行う必要があるのでしょうか。「個人のキャリア開発は個人的なものであり、組織として取り組む必要はない」という考え方もあるでしょう。一方で、以下の質問にはどのような回答が考えられるでしょうか。
- その組織で自分の求めるキャリア形成ができると思っている従業員(A)と、その組織では自分の求めるキャリア形成ができないと思っている従業員(B)では、どちらのほうがよいパフォーマンスを期待できるか?
- AとBでは、どちらのほうがより長く組織に貢献することを期待できるか?
- AとBでは、どちらのほうがより顧客満足を実現できることを期待できるか?
- AとBでは、どちらのほうがより自組織で活躍できる人に自組織で働くことを勧めてくれることを期待できるか?
これらの質問は、より大きな売上につながったり、新規顧客獲得コストや従業員採用コストの減少につながったりすることで、より良い財務的なビジネス結果につながります。投資家の満足にもつながりより多くの投資を期待できるところにもつながります。これらの質問の回答が、「Aのほうがより期待できる」というものであれば、ビジネスリーダーが、メンバーのキャリア開発に自分の時間を投資する価値はあるでしょう。
また、メンバーが「この会社には自分の求めるキャリア形成ができる」と確信しているということは、Dave Ulrich氏が提唱されている、Employee experienceのHopeにつながると思います。
(4) What Is the Next Step for Employee Experience? The Why, What, and How of Hope | LinkedIn
ビジネスリーダーがメンバーのキャリア開発を支援する方法(事例)
ここからは、ビジネスリーダーがどのようにメンバーのキャリア開発を行うのかについて、具体的に書いていきます。より詳細に言うと、「メンバーのキャリアビジョンを明確にする」、「メンバーのキャリアビジョンと役割に求められることや目標とをつなげる」、「メンバーがキャリアビジョンに近づいていると実感できるようにする」、「メンバーのキャリアビジョンをステークホルダーに共有する」ということについて書いていきます。
メンバーのキャリアビジョンを明確にする
一つ目は、「メンバーのキャリアビジョンを明確にする」です。メンバー自身が、自分のキャリビジョンを明確に持っている場合には、それについて理解するように聴いていきます。私の経験では、キャリアビジョンを言語化することに課題を感じている方が多いと感じています。更に、キャリアビジョンがあったとしても、それについてWHYの質問に明確に回答できる人は更に少ないと感じています。
キャリアビジョンが明確になっていない人に対しては、その人のパーソナルバリューを明らかにしていきます。私は、パーソナルバリューは、「その人の良い・悪い、好き・嫌い、楽しい・楽しくない等を決める基準」と考えています。つまり、キャリアビジョンは個人のパーソナルバリューに影響を受けます。個人のパーソナルバリューは、その人の今まで経験してきたことに大きく影響されます。ということは、個人のパーソナルバリューはすでにあるものです。パーソナルバリューが明確になっていないということは、すでに存在しているものにまだ気づいていないという段階なので、パーソナルバリューを明確にするということはそれらを見つけていくということになります。キャリアビジョンはその個人のパーソナルバリューに影響を受けるものなので、まずはパーソナルバリューを見つけていくこということを行います。
パーソナルバリューの見つけ方はいくつかの方法があると思いますので、詳しくはそちらをご参照いただければと思います。ここでは、私が実際に行っている方法について書いていきます。パーソナルバリューは、「その人の良い・悪い、好き・嫌い、楽しい・楽しくない等を決める基準」であり、その人が経験してきたことに影響を受けます。そのため、過去の感情がポジティブになったときのことを聴いていきます。よりシンプルに言うと、過去の楽しかったときのことについて話してもらいます。そして、その場面を自分も想像できるようにより詳しく聴いていきます。あたかも自分もその場面にいるかのように想像できるように聴いていきます。そうすることで、その人にとって大切なことを想像することができますし、その人自身も自分の大切なことを見つけていくことができます。最後に、「ここまで話してみて、具体的にどういったところが楽しかったですか?」と質問をすることで、その人のパーソナルバリューを特定していくことにつながります。
そのメンバーのパーソナルバリューが明確になったら、仕事においてそのパーソナルバリューが実現された時のことを想像してもらいます。その場面をより具体的にしていくことでその人のキャリアビジョンを作ることにつながっていきます。一方で、この段階ではキャリビジョンを明確に作ることは難しい場合もあります。その際は、無理にキャリアビジョンを作ることに固執せず、パーソナルバリューを活用していきます。
メンバーのキャリアビジョンと役割に求められることや目標とをつなげる
キャリアビジョンが明確になったら、次に「メンバーのキャリアビジョンと役割に求められることや目標とをつながる」ことを行います。キャリアビジョンが明確にならなかった場合は、パーソナルバリューと役割に求められることや目標とをつなげていきます。
組織で働いている以上、その人が担っている役割に求められることがあるでしょう。具体的に「こういうことを達成してほしい」といった期待値や目標があります。その期待値や目標と、キャリアビジョンやパーソナルバリューとをつなげていきます。具体的には、「この目標の達成に取り組むことで、自分のパーソナルバリューがこのように満たされ、キャリアビジョンの実現にこういうふうに近づける」と本人が実感できるようにしていきます。
ここでは、ビジネスリーダーは、質問を駆使して本人がそのつながりを見つけられるようにしていきます。ビジネスリーダーに考えがあれば、それを共有してより本人が考えることを促していきます。ポイントは、ビジネスリーダーの考えを押し付けるのではなく、本人が「自分で見つけた」と思えるようにするということです。ビジネスリーダーが質問を行い、本人がつながりを見つけていくということが難しそうであれば、ビジネスリーダーと本人で一緒にそのつながりを見つけていくということを行うこともできます。ただし、そのような場合でも、「ビジネスリーダーにサポートしてもらったけど、自分で見つけられた」と本人が思えることが重要です。
メンバーがキャリアビジョンに近づいていると実感できるようにする
次は、「メンバーがキャリアビジョンに近づいていると実感できるようにする」です。これは、定期的にメンバーと会話をする際に行います。その役割に求められる目標を達成するために定期的にメンバーと会話を行う際に、進捗確認や達成するための会話に加えて、適度にこの内容についても触れます。
メンバーが目標達成のために日常の業務を行っていると、その業務を行うことが目的になってしまう場合があります。その時に、その業務を遂行することで自分のキャリアビジョンに近づいていることを本人が実感できるようにしていきます。
具体的には、ビジネスリーダーが感じたことを共有したり、本人に質問したりします。ビジネスリーダーが本人の仕事ぶりをみていて、その本人のパーソナルバリューを満たすことにつながった言動について称賛します。または、本人の言動をどのように変えるとパーソナルバリューを満たすことをより実感できるようになるのかについてアドバイスをします。本人に気づきを促す場合には、質問をしてみることもできるでしょう。本人が自身の業務と、キャリアビジョンやパーソナルバリューとのつながりを見失わないように、適切なタイミングで本人が気付けるようにしていきます。
メンバーのキャリアビジョンをステークホルダーに共有する
4点目は、「メンバーのキャリアビジョンをステークホルダーに共有する」です。上長として、自チームのメンバーが自らのキャリアビジョンを実現できるようにサポートをしていきます。具体的には、本人の同意を得たうえで、そのメンバーのキャリアビジョンを実現する上でキーとなるステークホルダーに、メンバーがそのようなキャリアを目指しているということを知ってもらうことです。その上で、そのキャリアを実現する上で必要なことを聞くこともできるでしょう。また、そのメンバーとキーとなるステークホルダーをつなげることもできます。
こうすることによって、キーとなるステークホルダーが、その相当するポジションについて人選を考える際に、その個人も考慮に入れてくれるようにしていきます。
まとめ
今回は、ビジネスリーダーがメンバーのキャリア開発を行うことについて書きました。具体的には以下について書きました。
- なぜビジネスリーダーがメンバーのキャリア開発を行う必要性があるのか?
- ビジネスリーダーがメンバーのキャリア開発を支援する方法(事例)
- メンバーのキャリアビジョンを明確にする
- メンバーのキャリアビジョンと役割に求められることや目標とをつなげる
- メンバーがキャリアビジョンに近づいていると実感できるようにする
- メンバーのキャリアビジョンをステークホルダーに共有する
最後までお読みいただきありがとうございます。今回の記事が、少しでも多くの人々の参考になれば幸いです。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、メンバーのキャリア開発をどのように行っていますか?
コメント