このサイトは、ビジネスの成功に貢献したいと思っているHRのプロフェッショナルと組織マネジメントをより効果的に行いたいと思っているリーダーに対して、私の経験を共有することでお役に立つことを目指しています。
以前の記事で、組織のカルチャーとはどのようなものか、なぜカルチャー変革が必要なのかについて、私の考えを述べました。今回は、私がカルチャー変革をどのように行ってきたのかについて、一つの例として書いていきたいと思います。私は、カルチャー変革を「自分を知る」「仲間を知る」「自分(たち)と組織のつながりを知る」「新しい今と未来を創る」という4つのステップで考えています。以降のパートでより詳細に議論していきます。
自分を知る
ステップ1は、「自分を知る」です。「自分は、何を大切にしているのか」について明確にします。今までの回の中でやり方について具体的に書いているので、詳細はそちらを参考にしていただければと思いますが、簡潔に書いてみたいと思います。
自分が大切にしていることは、自分が何を良い、楽しい、うれしいなどと思うのか、逆にそれらと逆の感情はどういったものでもたらされるのかを決める基準となるものです。私は、この基準は、自分が今までに経験してきたことによって形作られていると考えます。
そこで、過去の楽しかったことについて具体的に思い出すことで、その軸を明らかにしていきます。あたかもその楽しかった場面に自分がいると思えるくらいに具体的に思い出していきます。そうすることによって、その時の感情がよみがえってきます。その感情から「本当は何が楽しかったのか」と考えることで、よりその軸が明確になっていきます。
一方で、逆の感情についても行うことができます。過去の楽しくなかったことや嫌だったことについて具体的に思い出します。同様にその時のことを具体的に思い出すことで、自分はどんなことについて楽しくないと感じたり、嫌な気持ちになったりするのかが分かってきます。そこから自分が大切にしていることを明確にしていきます。
これらについて、自分一人で考えることも良いのですが、組織のカルチャー変革を行うという観点から考えると、私は3-4名の少人数のグループで行うことのほうが多いです。一人が過去の出来事のことを話し、他の人たちが質問をしていきます。質問をする際には、他の聞き手がその話し手が思い出している場面を具体的にイメージできて、その聞き手もその場面にいるかのように思えるように質問をしていきます。聞き手は、自分がイメージする場面をより明確にするために、イメージしきれていないところについて尋ねていきます。すると、話し手は自分が経験した場面を思い出すために目をつぶって話し、聞き手は自分がイメージする場面をより明確にするために目をつぶって質問をしていくというようなことが起きてきます。聞き手もその時の場面に自分がいることをイメージできると、感情も浮かびかがってきます。そのようなことを通じて、聞き手は、話し手が大切にしていることはこういうことではないかと想像できるようになります。
少人数のグループで行うと、いくつかのメリットがあると実感しています。まず、自分一人で行うよりもより内省が深まると実感しています。聞き手に質問をされることで、話し手はその質問に答えようと一人で行う時よりもより具体的に思い出すことができます。より具体的に思い出せると、より明確に軸を特定することにつながります。また、聞き手が感じた話し手が大切にしていると思うことを共有してもらうことで、話し手の気づきにもつながっていきます。更に、他の人の大切にしていることを実感することで、ステップ2につながりやすくなります。
仲間を知る
ステップ2は、「仲間を知る」です。ステップ1で、個人が大切にしていることが明確になりました。ステップ2では、グループのメンバーが大切にしていることで、共通しているところを特定していきます。
ステップ2で重要なことは、「自分が大切にしていることは、他の人も大切にしているのだ」という気付きを得ることです。つまり、IからWeの感覚をつくっていきます。組織カルチャーの変革は、一人で実現できるものでもありません。他の人とのコラボレーションやサポートが必要になります。その前提となるのが、仲間を知って、Weの感覚を作ることです。
具体的には、ステップ1で行ったことを活用します。ステップ1で明らかになった自分が大切にしていることをグループの中で共有します。その際に、「達成感」などの一般的な言葉で共有することに加えて、その言葉で自分が意味することをより具体的に話します。そうすると、同じ「達成感」という言葉を選んだとしても、その意味するところは人によって違ったり、似たような内容のことを違う言葉で表現していたりといったことが理解されるようになります。このような議論を通じて、自分たちが大切に思っていることで共通するところを探求していきます。
その際に、言葉を選んでいく、見つけていくということを行うことに加えて、絵などでも表現してみます。「自分たちに共通する、大切にしていること」をグループのメンバーで話し合って、一つの絵を描いてみます。これによって、単純に楽しいということに加えて、言葉で考えていた時とは違う気づきが生まれたりします。
一方で、このエクササイズを行うことで、共通することに加えて、異なるところの理解も深まります。異なるところがどのように形作られてきたかを理解することは、相手を尊重し、相手の理解を更に深め、新たな視点を得る貴重な機会にもなります。
自分(たち)と組織のつながりを知る
ステップ3は、「自分と組織のつながりを知る」です。ここでは、まず創業者と自分(たち)のつながりを見つけていきます。その創業者がどういう想いでその事業を始めたのか、どんなことに問題意識をもって何を実現するために創業したのかなどについて理解を深めます。もし環境が変化していて、当時とは状況が異なっている場合でも、時を経ても変わらない創業者の想いを確認します。そういった想いが体現されたエピソードについても理解します。
それらについて理解をしたら、自分が大切にしていることと似ているところを探します。自分と創業者とのつながりを実感できたら、グループのメンバーの共通する大切にしていることと創業者のつながりを探求します。ここで、「自分(たち)が大切にしていることは、創業者も大切にしていて、その想いでこの会社を立ち上げたのだ」という感想になることが多いです。人によっては、この時点で「だから、私はこの会社で働いているのだ」という気づきを得る人もいます。
次に、その組織の「存在意義(Reason to exist)」と「Values」と自分(たち)が大切にしていることのつながりを見つけていきます。前提として、「存在意義」や「Values」は、創業者の想いが詰まった、どんなに時代が変化したとしても変わらない、その組織にとっての不変なものであるということがあります。そういった組織の「存在意義」と「Values」と自分(たち)が大切にしていることをつなげていきます。「存在意義」と「Values」を実際に作成した人がいれば、その人に説明をしてもらえると更に理解が深まるでしょう。「存在意義」と「Values」に使われている言葉一つ一つにどのような想いを込めて作ったのか、それぞれの言葉はどういう意味を持たせているのかなどについて説明を受けたり、ステップ2で行ったような議論をしたりすることで、更に「存在意義」と「Values」の理解が深まり、より自分(たち)とのつながりを見つけやすくなります。
新しい今と未来を創る
ステップ4は、「新しい今と未来を創る」です。ステップ3までで、自分と仲間たち、組織とのつながりを実感できるようになっています。つまり、以前の回で書いた、「組織をどのように認識しているか」について組織のメンバーが共通するものを持てるようになっています。
ステップ4では、その共通する認識をより強固にして、行動レベルで具体化していきます。
自分たちが創る未来を明確にしていきます。例えば、「今から半年後、組織の「存在意義」や「Values」が体現され、自分(たち)が大切にしていることや創業者の想いも実現しました。それを象徴する具体的な日常のシーンを描写してください。」のようなテーマで、グループで議論をしていきます。まずは個人ワークとして自分で考えてみます。ステップ1で行ったことを活用して、そのシーンをできる限り具体的にイメージすることで、自分の感情がポジティブに昂ることを実感します。その後、その内容をグループで共有し合い、「いいね」と思えるところを確認し合って、グループとしての日常のシーンを創っていきます。
その上で、皆の視点を、すべてが実現した半年後に移し、そこからこの半年を振り返ります。半年後の「今」に至るまでに、自分(たち)はどんなことを意識して取り組んできたのか、また、どんな困難があってそれらをどうやって乗り越えたのか、などについて話し合います。
そして、「半年前の」今に、組織として問題になっていることついても、どうやって取り組み、どんな言動をしたからこそ、半年後の「今」が実現されているのかについても話し合います。その際には、組織の「存在意義」や「Values」の観点でも考えます。
その後は、定期的にフォローをしていきます。例えば、月1回程度また集まる機会をつくり、進捗について話し合います。うまくいっていることを共有し、うまくいっていないことについてメンバーで議論して次の一歩を確認します。そして、また次の月にその進捗も含めて話し合います。望ましい行動が行われたことや、そういった行動によってステークホルダーの価値を実現して、自分たちが望むようにステークホルダーからも認知されたエピソードについて、全社で共有するのもいいでしょう。
また、下の図の仕組みについても、これらの仕組みが、自分たちが望む新しい未来を創ることをサポートするように、必要な修正を行っていきます。場合によっては、大規模な変更が必要になる場合もありますが、仕組みが未来を創造することを阻害するのではなく、促進するように変更をしていきます。

まとめ
今回は、どのようにカルチャーを変革するのかについて述べました。具体的には、以下について書きました。
- 自分を知る
- 仲間を知る
- 自分(たち)と組織のつながりを知る
- 新しい今と未来を創る
ご覧いただきありがとうございます。これらはあくまで私自身の経験と考えに基づくものですが、多くの方々にとっても有益なヒントとなることを願っています。なお、この記事は私の個人的見解であり、所属組織とは関係ありません。
皆さんは、カルチャーの変革をどのように行っていますか?
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